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英語論文に学ぶ「METHODSのクールな表現」(その2)
苦手克服! 統計解析の英語表現のポイント

2014/01/28

 前回に引き続き、論文の「METHODS」に書かれている英語表現を取り上げます。今回は「statistical analysis」(統計解析)です。「統計は苦手だから、やめた!」と別の記事に行かないでくださいね(笑)。論文読解および執筆の際に、統計解析は避けて通れないので、10分間の英語学習に是非おつきあいください。

【症例数計算(パワー計算)】
 英語では「sample-size calculation」といい、NEJM誌では、「statistical analysis」の冒頭でこの計算結果を示している論文をよく見かけます。介入研究の場合、新しい治療法や薬の使用により、従来方法と比べて、統計的に有意で臨床的に重要な差(statistically significant and clinically important difference)が検出できるように、必要なNの数(サンプルサイズ)を計算します。

(1)To calculate the appropriate sample size for the study, we proposed a working hypothesis:
(2)The sample-size calculation was based on validation of the dosing regimen.

 例えば「試験薬を投与した群の相対リスク減少は25%」と仮説を立てて、それを証明するために必要な症例数を算出します。エンドポイントを決めてから、症例数計算をするわけです。その逆に、集まりそうな症例数を予測して(あるいはデータを収集してしまってから)、エンドポイントを決めるというのは、やってはいけない方法とされています。

(3)We calculated that a sample of 5100 patients would provide 90% power to detect a relative risk reduction of 22% in the clopidogrel-aspirin group, with a two-sided type I error of 0.05, assuming an event rate of 14% in the aspirin group and a 5% overall rate of withdrawal (defined as medication nonadherence).

【(3)の音声ファイル⇒こちらです】(協力:HOYAサービス株式会社)

 上記の「90% power」というのが「検出力(1-β)」に相当します。医療(生物)統計学を学んだ方は、αエラー・βエラーという言葉を思い出してください。

  ≪αエラー =本当は差がないのに、差があるとしてしまう誤り≫
  ≪βエラー =本当は差があるのに、差がないとしてしまう誤り≫

 αエラーを“あわてんぼうのエラー”、βを“ぼんやりさんのエラー”と覚えた記憶があります。上記の場合は、検出力90%とあるので、βを10%に設定したようです。

(4)On the basis of prior studies, we assumed that the rate of the composite primary end point would be 5.1% in the clopidogrel group and 3.9% in the cangrelor group, representing a 24.5% reduction in the odds ratio with cangrelor. We estimated that we would need to enroll approximately 10,900 patients for the study to have 85% power to detect that reduction.

 上記には「a 24.5% reduction in the odds ratio with cangrelor」とあります。著者らは、カングレロル群のオッズ比が24.5%減少すれば、臨床的に意義があるとの仮説を立て、検出力を85%に設定して計算したところ、必要症例数は約1万900例だった、と解釈できます。

 症例数計算が必要なのは、大規模なランダム化比較試験だけと思っている方がいるかもしれませんが、そんなことはありません。観察研究や、単一施設での医師主導型の研究論文でも見かけます。

 上記の(1)は、NEJM誌に載った日本の未破裂脳動脈瘤悉皆調査の論文からの引用文です。私が今まで読んだ論文の中で、最も少ない症例数は、JACC誌に掲載されたチカグレロルとプラスグレルの血小板活性を調べた単一施設研究です。症例数が最低40例と算出されたので、脱落例などを考慮して44例の対象患者を集めた、と書いてありました。

(5)We hypothesized that ticagrelor 90 mg twice daily would result in a PR absolute difference of 50 PRU compared with prasugrel 10 mg once daily. Choosing a power of 95% and a 2-sided alpha level of 0.05, at least 40 patients in total were required to reach statistical significance based in the previous assumptions.

 この研究では、「チカグレロル90mg1日2回は、プラスグレル10mg1日1回と比べて、PRU(血小板活性の単位)50の絶対差が生じる」との仮説で、検出力は95%に設定しています。また、「a 2-sided alpha level of 0.05」とあるので、両側検定で許容できるαエラーは5%です。

 さらに詳しい説明は、CONSORT声明のSample size (Item7a) をご覧ください(こちら)。

著者プロフィール

西村多寿子(プレミアム医学英語教育事務所代表)にしむら たずこ氏。東京大学大学院医学系研究科国際保健学修士課程修了。外資系製薬会社、総合病院、産業保健分野での実務経験を経て独立。医学系の様々な領域の翻訳、記事執筆、講師歴のほか、医学系以外の研究者やビジネスパーソンとの交流にも力を入れている。

連載の紹介

西村多寿子の「10分で学ぶ論文英語のクールな表現」
循環器プレミアムで紹介された新着文献紹介記事の原著論文を中心に、論文によく使われる英語表現を紹介していきます。頻出単語や構文を理解すれば、先生方が執筆される論文の英語表現にも応用できると思います。また比較的短い英文には、自動読み上げ音声もついていますので、英語の発音も練習してみてください。

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