日経メディカルのロゴ画像

英語論文に学ぶ「METHODSのクールな表現」(その1)
研究デザイン、対象者、ランダム化、評価項目の英語表現

2014/01/14

 今回は、論文のMETHODS(方法)によく出てくる表現のうち、研究デザイン、対象者、ランダム化、評価項目を説明する英文を取り上げます。論文執筆中の方はもちろん、研究計画を練っている段階の方も、研究方法を英語で書いておけば、海外ジャーナルへの投稿を視野に入れた研究を進められるのではないでしょうか。

【研究デザイン】
 METHODSの冒頭で、研究デザインの種類が分かるように書かれた論文が多いです。研究デザインが 実験的研究(experiment)か観察的研究(observational study)か、あるいは、前向き(prospective)か後ろ向き(retrospective)かを見分けることが大切です。

(1) RE-ALIGN was a prospective, randomized, phase 2, open-label trial with blinded end-point adjudication.
(2) The ORBIT-AF registry is an observational study of outpatients with AF who are managed by primary care providers, cardiologists, and electrophysiologists.

【音声ファイル⇒こちらです。(1),(2)】(協力:HOYAサービス株式会社)

 すでに別の論文にデザインの詳細が載っている場合には、次のような表現も使えます。

(3) The RELY trial design has been previously published. Briefly, the primary study objective was to~  

【対象者】
 組み入れ基準(inclusion criteria)の説明では、目的集団(target population)を定義し、その集団の収集方法を記述します。対象者の年齢と疾患の説明には、以下のような英文がよく使われています。

* Patients 18 to 80 years of age were included if they had~ .
* Patients were eligible for inclusion if they were between the ages of 18 and 75 years and~ .
* Patients 12 years of age or older who had~ were eligible for inclusion in the trial.
* This analysis included men and women 45 to 74 years of age who ~

 除外基準(exclusion criteria)の英文も確認しておきましょう。

* Patients were excluded if they had~
* Major exclusion criteria were~
* Patients receiving 【薬剤名あるいは治療法】were excluded.

 上記のように、型にはまった文が多いものの、あわてて読んだり、英文法の知識が不十分だったりすると、解釈を誤ることがあるので、注意が必要です。例えば、

(4) No patients included in the study were treated with thrombolysis around the time of randomization.

 Noで始まる否定文ですが、動詞included のほかに be動詞のwereもあって紛らわしいですね。そんなときは、文の骨子を探すことが大切です。

 No patients were treated with thrombolysis.

 「血栓溶解療法で治療された患者はいなかった」が重要な部分。これに「included in the study」(本研究に組み入れられた)という情報が加わります。ここでの「included」は、名詞(patients)を修飾する過去分詞として使われていますが、主文では他動詞として使われることが多いです。したがって、「The analysis included men and women」の「men and women」のような目的語を必要とします。

【ランダム化】
 介入研究(intervention study)では、患者(参加者)の割り付け方法の記述も必要です。

* Participants were randomly assigned to receive 【薬剤A】 or 【薬剤】B in a ratio of 2:1.
* After the completion of the pretreatment phase, eligible patients were randomly assigned in a 1:1 ratio to receive【薬剤X】 or 【薬剤Y】.
* Randomization was performed with the use of a 24-hour automated voice-response system.

 「ratio」は比率、「automated voice-response system」は自動音声応答システムです。

【評価項目】
 主要評価項目は「primary end point」もしくは「primary outcome」と表現されることが多いです。

(5) The primary end point was the change from baseline to the end of week 16 in the distance walked in 6 minutes.
(6) The primary efficacy outcome was recurrent symptomatic and objectively verified venous thromboembolism or death associated with venous thromboembolism.

 「end point」と「outcome」は、「エンドポイント」「アウトカム」とカタカナ表記されることもあります。(6)の「primary efficacy outcome」は「有効性の主要評価項目」です。有効性に続いて、安全性の主要評価項目(primary safety outcome)を挙げている論文もあります。

 副次評価項目の表現も見ておきましょう。

(7) Key secondary efficacy outcomes included a new clinical vascular event (ischemic stroke, hemorrhagic stroke, myocardial infarction, or vascular death), analyzed as a composite outcome and also as individual outcomes.
(8) The predefined secondary efficacy outcomes included each component of the primary efficacy outcome, as well as death from cardiovascular causes and death from any cause.

 (7)の「composite outcome」は、「複合評価項目」と訳すことが多いです。この文の場合、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、心筋梗塞、血管死の4つを合わせて、1つの評価項目と見なします。「individual outcome」は、4つを個別に評価項目とします。

 (8)の「predefined」は、「事前に定義された」という意味です。事後に評価項目を決めたのではなく、研究開始時点で設定されていたことを表します。「prespecified」(事前に設定された)を使っている論文もよく見かけます。

【研究の質の高さが伝わる表現】
 統計解析方法を説明する前のパラグラフに、「プロトコールの中で(臨床イベントが)定義されている:be defined in the protocol」「独立した委員会が判定した:be adjudicated by an independent committee」「外部研究者(研究と直接関係ない医師・研究者)に確認してもらった:be confirmed by outside investigators」といった表現があると、後付けではなく周到な準備の上で、研究が実施されたことを読者に伝えることができます。

(9)All clinical events were defined in the study protocol and were adjudicated by an independent committee whose members were unaware of the study-group assignments.
(10)To confirm the accuracy of the data in the registry, we arranged for outside investigators to verify the data at randomly sampled institutions.

 (10)の英文は、N Engl J Med誌に2012年6月に掲載された日本未破裂脳動脈瘤悉皆調査(UCAS Japan)の論文「The Natural Course of Unruptured Cerebral Aneurysms in a Japanese Cohort」からの引用です。

 (1)~(10)の英文の出典と訳例は、次ページにあります。次回は、METHODSの最後に記載される統計解析(statistical analysis)の表現を取り上げる予定です。

著者プロフィール

西村多寿子(プレミアム医学英語教育事務所代表)にしむら たずこ氏。東京大学大学院医学系研究科国際保健学修士課程修了。外資系製薬会社、総合病院、産業保健分野での実務経験を経て独立。医学系の様々な領域の翻訳、記事執筆、講師歴のほか、医学系以外の研究者やビジネスパーソンとの交流にも力を入れている。

連載の紹介

西村多寿子の「10分で学ぶ論文英語のクールな表現」
循環器プレミアムで紹介された新着文献紹介記事の原著論文を中心に、論文によく使われる英語表現を紹介していきます。頻出単語や構文を理解すれば、先生方が執筆される論文の英語表現にも応用できると思います。また比較的短い英文には、自動読み上げ音声もついていますので、英語の発音も練習してみてください。

この記事を読んでいる人におすすめ