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不整脈源性心筋症での線維化はなぜ起こる?

2021/10/14
古川 哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所)

 不整脈源性心筋症(Arrhythmogenic Cardiomyopathy; ACM)は右室主体に病変が見られることから、従来は不整脈源性右室心筋症(Arrhythmogenic Right ventricular Cardiomyopathy; ARVC)と呼ばれていました。ところが、近年では左室にも病変が及ぶことから、ACMと呼ぶことも多いようです。

 ACMでは心外膜側優位の線維化・脂肪変性が特徴的な病理像として有名ですが、その分子メカニズムはよく分かっていません。それは、線維化・脂肪変性を生じる良い動物モデルがないためです。そこで、ACM原因変異を有するヒトiPS細胞を利用して、線維化・脂肪変性を生じるACMヒト心筋細胞モデルが開発され、その分子メカニズムが検討されました。

 心外膜は、心臓発生期には多能性前駆細胞であるとともに、心筋細胞に作用するパラクライン因子の発生源となり、上皮―間葉転換(Epicardial-mesenchymal transition; EMT)により冠動脈の平滑筋や線維芽細胞を産生します。ところが、成人になるとこれらの機能を失い、休止状態の心筋細胞層を覆う1層の膜となります。ところが、心臓障害や心臓ストレスにさらされると先祖返りし、心外膜の活性化、心外膜細胞の増殖、EMTが起こることが知られています。ACMでも、心外膜の活性化とEMTが線維化・脂肪変性に関与することが、最近の研究で示されました。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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