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ミトコンドリア障害が炎症反応を引き起こす機序
「ミトコンドリア→核」逆行性情報伝達の役割

2021/06/21
古川 哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所)

 ミトコンドリアの機能障害は炎症反応を引き起こし、これが心不全、心房細動、糖尿病などの心代謝疾患の病態に関係することが知られています。そのメカニズムとして酸化ストレスの関与が示唆されていますが、詳細は明らかになっていないのが現状です。

 ミトコンドリアには約1500個の蛋白質があります。ミトコンドリアのDNA(mtDNA)には37遺伝子が含まれ、37蛋白質を構成しますが、残りの1400強の蛋白質は核のDNAによってコードされます。従って、ミトコンドリアと核との間で交わされる情報伝達は、細胞の恒常性を維持するために極めて重要です。

 前述したように、核DNAがミトコンドリア蛋白質をコードする「核→ミトコンドリア情報伝達」は以前から知られていましたが、最近は「ミトコンドリア→核の逆行性(retrograde; RTG)情報伝達」が注目されています。核と比べてミトコンドリアにはDNA切断修復機構が十分備わっていないため、心代謝疾患の原因となる様々なストレスにより、容易にミトコンドリアDNA二重鎖切断(mtDSB)が生じます。

 このmtDSBが、炎症反応に何らかの形で関与していることは容易に想像されます。今回、mtDSBがRTG情報伝達により核に情報を伝達する仕組みを検討する過程で、ミトコンドリア障害が炎症反応を引き起こす機序が明らかになりました。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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