体内では毎日、数十億の細胞が死んでいきます。マクロファージには免疫作用以外に、これらの死細胞を除去する作用があり、死滅した分の細胞を細胞分裂により補填することで組織のホメオスタシスが維持されます。
心臓にはマクロファージが豊富に存在しますが、新陳代謝がほとんどないため、細胞が分裂する組織のような戦略ではホメオスタシスを維持できません。一方で、心臓は四六時中物理的・代謝的なストレスにさらされており、ホメオスタシス維持がとりわけ重要な組織でもあります。このような背景を持つ心臓で、どのようなメカニズムでホメオスタシスが維持されているのか、豊富に存在するマクロファージはホメオスタシス維持に関与するのかなどは、いまだ分かっていません。
このほどCell誌に、ダメージを受けて機能不全に陥ったミトコンドリアを、心筋細胞―マクロファージのネットワークによって排除することが、心筋細胞のホメオスタシスの維持、心筋細胞の長寿命に関わっていることが報告されました。
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著者プロフィール
古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介
古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。
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