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多遺伝子リスクスコアは心代謝疾患を予測可能か
13万人規模・46年間追跡のコホート研究を解析

2020/07/21
古川 哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所)

 心代謝疾患は、健康および医療経済的に大きな社会課題であり、その予防戦略を立てることが極めて重要です。疾患発症のリスク予測は、現時点では臨床情報と検査情報を用いて行われていますが、一方でこれには限界があることも分かってきました。例えば、現在「cardiovascular risk calculator」というリスク予測が利用されていますが(Eur Heart J. 2016;37:2315-81.)、この精度は「若い人に限定しても40%の人で疾患予測ができる」程度です。

 近年、全ゲノム関連解析(GWAS)が多くのコモン疾患で行われており、多数の疾患感受性SNPs(一塩基多型)が同定されています。これら複数の疾患感受性SNPsを用いて疾患発症を予測した数値を、「多遺伝子リスクスコアPRS:polygenic risk score)」と言います。PRSを用いることで疾患の予測精度が上がることが期待されて久しいものの、本当に予測精度が上がるのか、はたまたよくあるように期待外れで終わってしまうのかはまだ分かっていません。

 そんな中、2020年4月に、冠動脈疾患(CHD)、2型糖尿病(T2D)、心房細動(AF)、乳癌、前立腺癌の5疾患に対する、PRSによる疾患予測についての研究が発表されました。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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