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AIが心電図を読み無症候性の心不全を予想する

2019/08/05
古川 哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所)

 日本の死亡原因において、心疾患は長年第2位を占めています。国民の2人に1人が一生に一度は心疾患に罹患し、7人に1人が心疾患で死亡する時代となっています。最近では「心不全パンデミック」という言葉も使われるようになり、超高齢化社会を迎えた我が国では「加齢性心不全」も増えていることから、心疾患の中でも特に心不全対策が急務とされています。

 心不全に関して、近年「無症候性左室機能不全(Asymptomatic left ventricular dysfunction; ALVD)」という概念が注目されています。ALVDは人口の1.4~2.2%を占めるとされており、高齢者に限るとその割合は9%にも上ります。

 内閣府の「第5期科学技術基本計画」において提唱された「Society 5.0※1」(外部リンク)では、疾患発症後の「cure」とともに、疾患発症前の「care」の重要性が強調されています。心不全について言えば、ALVDの段階で発症前に患者を同定することが重要であり、より具体的には、NYHA分類I度でALVDを検出して医療介入する「先制医療(Preemptive medicine)」が求められているのです。

※1 サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。「第5期科学技術基本計画」において我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱された。

 現時点ではALVDの検出には、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)やNT-pro BNPが用いられていますが、必ずしも満足のいく結果が得られておらず(J. Card. Fail. 2009;15:377-84; Circulation. 2004;109:3176-81)、これに代わる新たな方法の探索が行われています。そんな中、心電図のAI解析によってALVDを検出する試みについての研究が発表されました。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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