日経メディカルのロゴ画像

PCIの再灌流傷害に朗報か
コハク酸が再灌流傷害の代謝マーカー

2014/12/02

 冠動脈インターベンション(PCI)の再灌流傷害に朗報となるかもしれない論文が発表された。

 現代の循環器救急治療では、急性心筋梗塞に対するPCIが花盛りである。自分が研修医のころは血栓溶解療法が始まったばかりだった。これがバルーンカテーテルになり、金属製のステントになり、今では薬剤溶出性ステント(DES)が主流となっている。

 このように今をときめくPCIであるが、一方で再灌流に伴い発生する活性酸素が再灌流傷害を引き起こす。ただし、PCIではあまり再灌流傷害に注意が払われていないように感じるのは、筆者がPCIの専門外だからだろうか? いずれにしても、再灌流傷害以上に再灌流によるメリットの方が大きいようで、再灌流療法は今やゆるぎないものとなっている。とはいえ、再灌流傷害を最小限に抑えることができればPCIの効果をさらに上げることができるはずである。実際、KKR立川病院の小山卓史先生は再灌流傷害から心筋を守る新しい再灌流法として乳酸を付加する方法を発表している(Intern. J. Cardiol. Metabolic & Endocrine 2014;2:30-34)。

 再灌流時の活性酸素産生は、従来ミトコンドリアの呼吸鎖が停止することによる非特異的な反応であり、非特異的であるからこそ効果的な予防法・治療薬がないと考えられてきた。ところが、11月号のNature誌に再灌流時の活性酸素産生は特異的な代謝応答であることが発表された。

【論文】 虚血性コハク酸蓄積がミトコンドリアROS産生を介して再灌流傷害を制御する
Ischemic accumulation of succinate controls reperfusion injury through mitochondrial ROS
Edward T. Chouchani et al.
Nature 2014;515:431-4344

●虚血-再灌流傷害の代謝サイン『虚血性コハク酸蓄積』
 本論文では、最初に心臓を含む4つの臓器で虚血・非虚血臓器間で比較メタボローム解析を行い、虚血時に蓄積する代謝物の探索を行っている。キサンチン・ヒポキサンチン・コハク酸の3つが同定された(図1A)。虚血-再灌流傷害にはミトコンドリアが関係することは周知の事実である。3つの代謝物のうちコハク酸蓄積はこれまで報告がないこと、ミトコンドリアに局在する分子であることから、筆者らはコハク酸に注目し、以後の解析を進めている。

 図1Bに示すように、コハク酸は虚血により増加し、再灌流とともに速やかに低下している。このことから、コハク酸の虚血性蓄積とそのwash outが再灌流傷害に関与するという作業仮説を立てることができる。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

この記事を読んでいる人におすすめ