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PCSK9標的薬はスタチンの次のブロックバスターか?

2014/03/04

 血清LDLコレステロール(以下LDL-C)濃度が30mg/dL変化すると、冠動脈疾患のリスクが約30%変化する。このことからも明らかなように、血清LDL-C濃度は冠動脈疾患の主要なリスクファクターである。スタチンはLDL-C値を最も効果的に低下させる薬剤で、世界で最も処方されている薬剤の1つである。ところが、スタチンでもLDL-C値を十分コントロールできないケースがあり、特に冠動脈疾患を有する患者や糖尿病患者などのいわゆるハイリスク患者でその傾向が強い。ハイリスク患者では、100mg/dL以下のLDL-C目標値の達成率は約50%、さらに厳密な目標値である70mg/dL以下の達成率はわずか30%といわれる。このようにLDL-C低下はスタチンの存在にも関わらずいまだにアンメットニーズunmet needsと考えられており、CETP阻害薬をはじめしのぎを削って新薬開発が行われている。今回は、PCSK9と呼ばれるコレステロール治療の新たな注目分子を標的とする医薬品に関する下記の論文を紹介する。

■健常ボランティアにおけるPCSK9の合成に対するRNA干渉医薬品と血清LDLコレステロール濃度に対する効果:無作為化、単純盲検、プラセボ対照、フェーズ1試験
Effects of an RNA interference drug on the synthesis of proprotein convertase subtilisin/kexin type 9 (PCSK9) and the concentration of serum LDL-cholesterol in healthy volunteers: a randomized, single-blind, placebo-controlled, phase 1 trial.
Fitzgerald K et al.
Lancet 2014;383:60-68


●興味深いコレステロール代謝の注目株「PCSK9」
 PCSK9はここ1~2年盛んに話題になっており、聞いたことがある人も多いかもしれない。日経メディカルでも、2012年末から新着文献・学会情報などで何回か取り上げられている。PCSK9はタンパク質を分解するプロテアーゼであり、細胞内・外でLDL受容体(LDLR)に結合し、これを分解する(図1)。PCSK9の機能獲得変異が家族性高コレステロール血症の原因として同定されているが、これはLDLRが過剰に分解されるため、肝臓にLDL-Cを取り込めず血中LDL-Cが上昇すると考えられる。PCSK9はまた細胞外に分泌され血中で検出される。ところが、血中でPCSK9が検出できない人が少数ながら存在し、これらの人では血清LDL-C値が20mg/dL以下と極めて低値を示す。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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