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心筋エネルギー代謝は心不全予後予測のピースか?

2014/01/06

 わが国における心不全の患者数は欧米に比べて少ないものの約25万人、心不全による死亡者数は約5万人/年であり、その数は年々増加している。予後をみると、心不全と診断された患者の5年後の死亡率は約70%、心不全入院患者の1年以内の再入院率は約35%と欧米同様極めて不良であり、改めて心不全死を減らすことが循環器医の重要なタスクであることが痛感される。

 心不全死を減らすためには、心不全の予後予測の精度を上げる必要がある。心不全の重症度・予後予測のマーカーとして従来からNYHAクラスと左室駆出率(LVEF)が用いられてきたが、上記のように必ずしも心不全死予防は十分とは言えない。最近、メタボロームという言葉を頻繁に耳にし、またアメリカでMetabolic Cardiologyというテキストがベストセラーになっているように心筋代謝の注目度が高く、核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を用いた心筋エネルギー代謝の解析が新たな心不全重症度・予後のバイオマーカーとして期待されている。2014年第1回の本ブログでは、MRSで求めた心筋エネルギー代謝指標のCK fluxが新たな心不全の予後予測マーカーとなるか調べた下記の論文を紹介する。


クレチンキナーゼを介するATP移動の代謝速度(CK flux)が臨床的心不全事象と死亡を予測する
Metabolic rates of ATP transfer through creatine kinase (CK flux) predict clinical heart failure events and death
P A Bottomley et al.
Sci. Transl. Med. 2013;5:215re32


著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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