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生物学的ペースメーカに人工ペースメーカ代替としての可能性が

2013/10/31

 心臓は約50億個の心筋細胞からなるが、これらの興奮は洞房結節のわずか1万個弱の自動拍動するペースメーカ細胞によって維持される。加齢や心不全などにより洞房結節の機能が低下すると、人工ペースメーカの植え込みによる治療が行われる。ペースメーカ植え込みは新規が年間4万件弱、ジェネレーター交換を含めると年間6万件弱で年々微増傾向にある。これだけで全医療費の約2%を占め、医療費高騰が叫ばれるわが国では重荷となっており、「生物学的ペースメーカbiological pacemaker)」の開発に期待が寄せられている。

 これまでは、生物学的ペースメーカの樹立はイオンチャネルの遺伝子操作や胚性幹細胞(ES細胞)の移植により試みられていた。欧米ではすでに臨床治験も行われているが、必ずしも普及するところまでは至っていない。今回は、Nat. Biotech.誌に報告された固有心筋細胞を洞結節細胞に転換する「ダイレクト・リプログラミング(direct reprogramming)」による新たな生物学的ペースメーカ樹立の試みを紹介し、生物学的ペースメーカが人工ペースメーカの代替となる可能性があるのか考えてみたい。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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