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血液型ABOは心筋梗塞発症と相関する!
非O型は「凝固亢進症」に寄与する因子の1つかも

2013/06/03

 筆者がポスドク時代、お昼の雑談時にみんなで集まって「何々さんはB型でマイペースだよね」などと血液型と性格の話で盛り上がっていた時、会社から出向してきていたS研究者に「先生たちお医者さんが、そんな非科学的な話をするなんておかしいですよ!」と釘を刺された。ところが最近、これが必ずしも非科学的とは決めつけられないことが示唆された。血液型ABOを規定する遺伝子自身が、性格ではないが心筋梗塞発症と関連することが科学的に示されたのだ。2年前の論文であるが、今回は下記の論文を紹介したい。

冠動脈硬化および冠動脈硬化患者における心筋酵素発症と関連する新規染色体座ADAMTS7とABOの同定:2つの全ゲノム相関解析
Identification of ADAMTS7 as a novel locus for coronary atherosclerosis and association of ABO with myocardial infarction in the presence of coronary atherosclerosis: two genome-wide association studies
Reilly MP et al.
Lancet 2011;377:383-392

■ ABO遺伝型と心筋梗塞

 ABO血液型と心筋梗塞の関係を示す臨床データは実は半世紀以上前(1954年)にすでに報告されており、81人の心筋梗塞患者を調べると1人もO型の患者がいなかった。同様の結果はその後何度か報告されており、O型が心筋梗塞になりにくいことは知る人ぞ知るトレビアなのかもしれない。

 今回紹介する論文では、造影検査で冠動脈疾患が見つかった患者で、心筋梗塞を発症した5783人と心筋梗塞を発症していない3644人で全ゲノム関連解析(GWAS)を行った(GWASに関しては本ブログ2012年6月「心房細動遺伝的リスクから見えてくる個別化医療の可能性」参照)。その結果、心筋梗塞発症と関連する49のSNPsが同定され、そのうち関連の強いベスト11はすべて9q34.2に集中していた。

 図1下に示すように、9q34.2領域には17の遺伝子がある。GWASでは、全体のSNPsの1/10程度を解析することにより全体のゲノム型が予測できることを根拠に、マーカーとなるSNPs(これを「タグSNPs」という)だけを調べている。すべてのSNPsを調べているわけではないので、9q34.2にあるSNPsのどれが心筋梗塞と関係するのか、言い変えると17個の遺伝子のうちどの遺伝子が心筋梗塞と関係するのかはまだ分からない。そこで、9q34.2領域にあるすべてのSNPsと心筋梗塞との関係を調べ直してみると、SNP rs514659が最も心筋梗塞と関連が高く、同SNPは血液型を決める遺伝子ABO上に位置する(図1)。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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