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血液凝固Xa因子阻害剤に待望の解毒剤
リバーロキサバン、フォンダパリヌクスの出血性合併症に光明が!

2013/05/01

 最近、新たな抗凝固薬として、トロンビン阻害剤Xa阻害剤が次々と開発されている。今回、Xa阻害剤に待望の解毒剤が開発されたので、その論文を紹介する。

 欧米、日本のワーファリン抗凝固療法のガイドラインが作られた直後、たまたま欧米、日本のガイドライン作成に関わった先生お1人ずつから個別にお話を伺う機会があった。興味深いことに、ガイドライン作成に関わった先生ご自身がお2人とも、「厳密なワーファリンによる抗凝固は行っていません」と仰っていた(今では、CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアなどでリスク層別化が可能となったのでおそらく事情は変わってきていると思うが…)。その理由として、これまた偶然お2人とも「統計上100人の脳塞栓を予防できても、1人の医原性脳出血を作るのは私にとっては大きなトラウマだ」というようなニュアンスのことを仰っていた。実際、ワーファリンは今でも患者をERに運ばせる薬物のベスト3に入っている。

 このような背景からも分かるように、医師にとって抗凝固薬による大出血はなんとしても避けたい副作用なのだ。そこで、抗凝固薬には有効な解毒剤がセットで存在することが多く、ヘパリンにはプロタミン、ワーファリンにはビタミンKが存在する。

 しかし、最近、新たな抗凝固薬として、トロンビン阻害剤やXa阻害剤が次々と開発されているが、今のところ有効な解毒剤は存在しない。この問題点は、ニューヨークタイムズ紙でも“A promising drug with a flaw”として大々的に取り上げられた。今回、そんなXa阻害剤に待望の解毒剤が開発された。

血液凝固Xa因子の直接阻害剤および間接阻害剤による凝固阻止を解消する特異的解毒剤
A specific antidote for reversal of anticoagulation by direct and indirect inhibitors of coagulation factor Xa
G Lu et al.
Nat. Med. 2013;19:446-451

●ファクターXa(fXa)の凝固作用
 Xa阻害剤の解毒剤の作用メカニズムは、ファクターXafXa)がどのように凝固作用を示すのか知っているとその理解が格段に違ってくる。

 fXはプロトロンビン複合体の中に含まれるセリンプロテアーゼ(セリンを活性中心に持つ酵素)であるが、通常ではプロトロンビンを切断してトロンビンにする凝固促進作用を発揮しない。fXが活性化されるためには、2つの機構が連続的に起こる必要がある。

 1つはVit-K依存的機構である。Vit-K依存的glutamyl carboxylaseによりグルタミン酸が修飾されカルボキシグルタミン酸となり「GLA(γ-carboxyglutamic acid)ドメイン」が形成される(図1左→中)。この過程が、ワーファリンの標的となるのである。

 もう1つはCa2+(血液凝固第IV因子)依存的機構であり、これによってVit K依存的に形成されたGLAドメインを介してfXが細胞膜に移動する(図1中→右)。細胞膜にはすでにfVaが存在し、これによりfXがfXaへ変換され凝固経路が進行する(図1)。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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