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抗凝固薬の薬理ゲノム学の成果
ダビガトラン血中濃度・出血性副作用の遺伝的規定因子が明らかに

2013/04/02

 「ナウい」や「アッと驚くタメゴロー」(←古っ!)などは日常でほとんど聞くことがなくなっており、「死語」にあたるのでしょうか? 展開の速い医学用語にも多くの死語がありそうです。最近、「特異体質」という言葉を聞くことがめっきり減った気がします。自分たちが研修医の頃は全身麻酔で悪性高熱が起こると、「お気の毒ですが特異体質で・・・」と説明していましたが、その後のゲノム研究の進展からリアノジン受容体の遺伝子変異が原因であることが明らかとなり、リアノジン受容体拮抗薬ダントロレンが特効薬として開発されました。このように、薬物に対する感受性の個人差の多くが遺伝的背景によって規定されていることが明らかとなり、これを調べる学問「薬理ゲノム学pharmacogenomics)」が注目されています。今回は、最近使用頻度が飛躍的に増加している直接トロンビン阻害薬ダビガトランの血中濃度・出血性副作用を規定する遺伝因子に関する下記の論文を紹介します。

ダビガトランの血中濃度と出血の関係の遺伝的規定因子
Genetic determinants of dabigatran plasma levels and their relation to bleeding
G. Pare et al.
Circulation 2013 online

●抗凝固薬・抗血小板薬のpharmacogenomics
 抗凝固薬・抗血小板薬は、効き目が弱いと血栓塞栓症のリスクが上がり、効き目が強すぎると脳出血や消化管出血などの生命を脅かす出血性副作用を生じます。そこで、適切な薬用量を投与することが重要であり、抗凝固薬・抗血小板薬のpharmacogenomics研究が精力的に行われています。

 ワーファリン作用には大きな個人差があることは臨床家なら誰しも経験するところです。これには、薬物代謝酵素CYP2C9とビタミンK依存性凝固因子II、VII、IX、Xの活性化に関わる酵素VKORC1の遺伝子多型の関与が報告されています。CYP2C9には、遺伝子多型CYP2C9*1とCYP2C9*3(*2を持つ日本人は少ないので無視します)、VKORC1には遺伝子多型H1~H9があり、ワーファリン感受性との関係は表1のようになります。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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