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心臓への細胞移植治療はまだバラ色じゃない!
治療6カ月時点での安全性確認という重要な進展も

2013/03/04

 山中伸弥教授によるiPS細胞の発見により、様々な難治性疾患に対する細胞移植治療の期待が高まっている。本年2月28日、ついに世界初の臨床応用となる加齢黄斑変性に対するiPS由来網膜移植の臨床試験が厚生労働省に申請された。心臓におけるiPS由来心筋細胞の移植治療に関しては、昨年暮れ森口尚史氏によるとんでもないニュースが飛び交ったことは記憶に新しいが、実状はまだ少し時間がかかりそうである。これに先立って、最近ほかの細胞ソースによる心臓への細胞移植治療のフェーズ1・2臨床試験結果が発表された。

 心臓への細胞移植治療のソースとしては、

・ES細胞由来心筋細胞
・骨髄由来単核細胞(BMC)
・間葉系幹細胞(MSC)
・cardiosphere由来心臓幹細胞(cardiosphere-derived cell:CDC)
・iPS細胞由来心筋細胞
・骨格筋細胞

などがある。今回は、BMCおよびCDCを用いた細胞移植治療の比較的大きなサンプルで行われたFOCUS-CCTNRおよびCADUCEUS試験の2論文を紹介する。

Perin EC, et al.
Effects of transendocardial delivery of autologous bone marrow mononuclear cells on functional capacity, left ventricular function, and perfusion in chronic heart failure. The FOCUS-CCTRN trial.
JAMA 2012;16:1717-1726

Makkar RR, et al.
Intracoronary cardiosphere-derived cells for heart regeneration after myocardial infarction (CADUCEUS): a prospective, randomized phase 1 trial
Lancet 2012;10:895-904



■BMCの移植-FOCUS-CCTRN(Cardiovascular Cell Therapy Research Network)

 Perinらは、NYHA II-IIIあるいはCCS II-IVでLVEFが45%以下の慢性虚血性心疾患患者91名を2:1に不作為に振り分け、61名にBMC、31名にプラセボを投与した。腸骨稜から80-100 mLの骨髄穿刺液を採取し、CD34あるいはCD133陽性細胞を単離・増殖し、1億個の細胞をカテーテルにより心内膜下に注入した。6カ月後に1次エンドポイントのLVESV、最大酸素消費量、SPECT reversibility、LVEFを細胞移植前と比較した。その結果を図1に示す。BMC投与群で、LVEFがわずか(2.7%)に改善しているものの、4因子ともBMC注入により有意な改善は示さず、プラセボ群との比較でも有意差を認めなかった。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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