山中伸弥教授によるiPS細胞の発見により、様々な難治性疾患に対する細胞移植治療の期待が高まっている。本年2月28日、ついに世界初の臨床応用となる加齢黄斑変性に対するiPS由来網膜移植の臨床試験が厚生労働省に申請された。心臓におけるiPS由来心筋細胞の移植治療に関しては、昨年暮れ森口尚史氏によるとんでもないニュースが飛び交ったことは記憶に新しいが、実状はまだ少し時間がかかりそうである。これに先立って、最近ほかの細胞ソースによる心臓への細胞移植治療のフェーズ1・2臨床試験結果が発表された。
心臓への細胞移植治療のソースとしては、
・ES細胞由来心筋細胞
・骨髄由来単核細胞(BMC)
・間葉系幹細胞(MSC)
・cardiosphere由来心臓幹細胞(cardiosphere-derived cell:CDC)
・iPS細胞由来心筋細胞
・骨格筋細胞
などがある。今回は、BMCおよびCDCを用いた細胞移植治療の比較的大きなサンプルで行われたFOCUS-CCTNRおよびCADUCEUS試験の2論文を紹介する。
Perin EC, et al.
Effects of transendocardial delivery of autologous bone marrow mononuclear cells on functional capacity, left ventricular function, and perfusion in chronic heart failure. The FOCUS-CCTRN trial.
JAMA 2012;16:1717-1726
Makkar RR, et al.
Intracoronary cardiosphere-derived cells for heart regeneration after myocardial infarction (CADUCEUS): a prospective, randomized phase 1 trial
Lancet 2012;10:895-904
■BMCの移植-FOCUS-CCTRN(Cardiovascular Cell Therapy Research Network)
Perinらは、NYHA II-IIIあるいはCCS II-IVでLVEFが45%以下の慢性虚血性心疾患患者91名を2:1に不作為に振り分け、61名にBMC、31名にプラセボを投与した。腸骨稜から80-100 mLの骨髄穿刺液を採取し、CD34あるいはCD133陽性細胞を単離・増殖し、1億個の細胞をカテーテルにより心内膜下に注入した。6カ月後に1次エンドポイントのLVESV、最大酸素消費量、SPECT reversibility、LVEFを細胞移植前と比較した。その結果を図1に示す。BMC投与群で、LVEFがわずか(2.7%)に改善しているものの、4因子ともBMC注入により有意な改善は示さず、プラセボ群との比較でも有意差を認めなかった。