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「HDLコレステロール仮説」神話を修正する時が来た?

2012/11/01

 最近、これまで善玉と考えられていたHDLが必ずしも動脈硬化にとってよいわけではないことを示唆する臨床データが散見される。日経メディカルでも、筆者は2011年7月14日「HDLにも善玉と悪玉がある」という記事を掲載し、2012年3月15日には「悪玉HDL」という記事も掲載されている。今回は、そんな最近しばしば目にし耳にする善玉HDL悪玉HDLに関する2編のreviewを紹介する。

「HDLコレステロール仮説」を修正する時が来た?
Is it time to revise the HDL cholesterol hypothesis?
D.J. Rader & A.R. Tall
Nat. Med. 2012;18:1344-1346

HDLと心血管疾患リスクの定量は新しい時代に入る?
The not-so-simple HDL story: A new era for quantifying HDL and cardiovascular risk?
J.W. Heinecke
Nat. Med. 2012;18:1346-1347

■HDLと心血管リスク
 HDLコレステロール(HDL-C)レベルと心血管疾患発症頻度が逆相関することから、HDLレベルを上昇させると心血管疾患リスクが軽減されるという「HDLコレステロール仮説」が長年信じられてきた。HDLの主要な構成成分apoA-Iが、HDLよりも心血管リスクの軽減と強く相関することが示唆されており、事実リコンビナントapoA-Iの静脈内投与により冠動脈の動脈硬化巣が縮小することがヒトで報告された(JAMA 2003;290:2292-2300)。

 ところが最近の臨床データから、「HDLコレステロール仮説」に対して強い疑問が投げかけられている。市場に出回っている薬物の中で最もHDL上昇効果のあるとされるナイアシンを用いたAIM-HIGH study (NEJM 2011;365:2255-2267)(図1A)、新たな薬物CETP阻害薬torcetrapibを用いたILLUMINATE trial(NEJM 2007;357:2109-2122)(図1B)、dalcetrapibを用いたdal-OUTCOMES study (Am. Heart J. 2009;158:896-901)では、HDL上昇が心血管リスクの軽減をもたらしていない。さらに、ヒトの遺伝子研究で内皮リパーゼ遺伝子LIPGの1塩基多型(SNP)Asn396SerがHDLレベルと相関するが、心筋梗塞発症とは相関しなかった(Lancet 2012;380:572-580

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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