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ジギタリスの想定外の作用――癌免疫作用

2012/09/04

 ジギタリスの想定外の作用が注目を集めている。癌免疫作用である。

 ジギタリスは、皆さんご存知のように心不全に使われる強心薬であり、以前は切り札的存在であった。ジギタリスの有効性に関する臨床大規模試験のPROVED試験(Prosapective Randomized study Of Ventricular failure and Efficacy of Digoxin、1993年)、RADIANCE試験(Randomized Assessment of Digoxin on Inhibition of Angiotensin Converting Enzyme、1993年)では、ジゴキシン投与中の心不全患者でその投与中止の影響を調べている。ジギタリス中止により、心不全の症状が有意に悪化した。

 一方、DIG試験(Digoxin Investigation Group trial、1997年)では、心不全患者の生存におけるジゴキシンの効果を調べたが、ジゴキシン投与群で死亡率を改善するデータは得られなかった。すなわち、ジゴキシン治療は心不全の症状改善はもたらしたが、長期予後の改善にはつながっていない。

 これらの臨床大規模試験の結果をもとに、心不全に対するジギタリスの使用は中等症~重症心不全患者の症状改善目的に限定される傾向にある。このジギタリスに、抗癌作用というクリスチアーノ・ロナウドの無回転フリーキックばりの変化球的薬効が浮上してきた。癌免疫という異分野の話であるが、ジギタリスという循環器疾患とは切っても切り離せない薬物に関する話題なので、今月は下記の論文を取り上げることとした。

Cardiac glycosides exert anticancer effects by inducing immunogenic cell death
Laurine Menger et al.
Sci.Transl.Med.2012;4:143ra99

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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