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心房細動遺伝的リスクから見えてくる個別化医療の可能性
-国際メタ解析CHARGE study

2012/06/12

 これまで不定期でお届けしていたNew Insight from Basic Researchを「基礎と臨床の架け橋」というコラムで月刊のペースで紹介することになりました。今後もよろしくお願いいたします。今回は第1回の記念号ということで、自分もauthorsに名前を連ねている、心房細動遺伝的リスクの国際メタ解析CHARGE studyに関する下記の論文をもとに、心房細動の遺伝的リスクについて解説したいと思います。

Meta-analysis in the AFGen consortium identifies six novel loci for atrial fibrillation
Ellinor PT et al. Nat. Genet. 2012;44:670-675

●心房細動発症にも遺伝的リスク!

 皆さんご存知のように、心房細動は心臓弁膜症・高血圧・心不全などの循環器疾患に合併することが多く、また加齢、肥満、喫煙、飲酒などの生活環境がリスク因子となる多因子疾患です。

 そんな心房細動にも、遺伝子的リスクの存在を示唆する臨床データが蓄積してきました。不整脈クリニックを訪れた心房細動患者の5%、孤発性心房細動に限れば実に15%に家族歴があります。Framingham研究では、片親が心房細動の場合は1.85倍、両親が心房細動の場合は3.23倍、心房細動の発症率が高くなります。これらの臨床データから、心房細動の遺伝的リスクを網羅的に検討する全ゲノム相関解析(genome-wide association study:GWAS[ジーバスと発音])が複数行われました。
 
●GWASとは?

 ゲノムはA、T、G、Cの4つのコードの配列からなっていますが、この配列に個人差がありこれを「遺伝子多型」と呼びます。遺伝子多型の中でも、1塩基の多型のことをsingle nucleotide polymorphism (SNP)と呼びます。

 遺伝子多型は、性格や体系ばかりでなく、特定の疾患への罹りやすさ・治療応答性の個人差の一因となります。このゲノムの個人差を知り個々人に最適な医療を行おう、というのが個別化医療の主旨です。ヒトのゲノムには約30億の塩基対があり、この中でSNPは300万~1000万あると言われています。ただ、生殖細胞内で母親由来と父親由来染色体の相同組み換えが起こるとき、組み換えが高頻度で起こる場所が決まっており、この組み換えのホットスポットとホットスポットの間の染色体領域のSNPは挙動を共にします。これを連鎖不平衡(linkage disequilibrium:LD)の関係にあると言い(図1)、LDの存在のため300~1000万すべてのSNPsを調べなくても、約1/10すなわち30万~100万SNPsを調べるだけでSNPsの個人差を知ることができます。30万~100万SNPsを一度に解析できるジーンチップが市販されており、これを用いてSNPsをゲノム全体で網羅的に解析する研究をGWASと呼びます。

著者プロフィール

古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授)ふるかわてつし氏。89年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。米国マイアミ心臓研究所、マイアミ大学留学を経て、94年東京医科歯科大学難治疾患研究所自律生理分野・助手。99年秋田大学医学部第一生理学講座・助教授、2003年4月より現職。

連載の紹介

古川哲史の「基礎と臨床の架け橋」
臨床医から基礎医学の研究に身を転じた古川哲史氏に、ワンランク上の臨床を実践するために知っておいた方がいい基礎知識を、論文トピックスを材料に解き明かしてもらいます。

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