
「心房細動塾」でおなじみの山下武志氏による新刊、『EBM時代の心房細動 25のエッセンス』が出版されました(メディカルサイエンス社刊、税込2940円)。
山下氏によれば本書は、「心房細動診療の『芯』を持つための材料」(序章より)として25の大規模臨床試験およびメタ解析を「厳選」し、その試験デザイン、結果、解釈やその注意点などについて、見開き2ページを原則としてまとめたものです。
最初に取り上げられた大規模臨床試験は、心室期外収縮に対するフレカイニド・エンカイニドの効果を見るために行われたCAST(1991年)です。心室期外収縮の発生は抑制されたのですが不整脈死が有意に増加、その後の抗不整脈薬の臨床試験に大きな影響を与えた試験として循環器医の脳裏に焼き付いた試験といえるでしょう。
時代は進み、AFFIRM(2002年)、RACE(同年)、わが国で行われたJ-RHYTHM(2009年)、心不全合併患者を対象としたAF-CHF(2008年)など、洞調律維持と心拍数調節を比較した大規模臨床試験が多く行われましたが、それまで誰もが疑わなかった洞調律維持の優位性は、証明できませんでした。
同時期、抗血小板薬併用療法と抗凝固療法を比較したACTIVE W(2006年)、またアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を用いたアップストリーム治療については、魅力的な仮説を実証しようとGISSI-AF(2009年)、ACTIVE I(2009年)、J-RHYTHM II(2010年)、ATIPAFがそれぞれ行われ(2010年)、ネガティブデータの山を築きました。
心房細動の治療目的がどう変遷し、それを証明するためにどのような大規模臨床試験が組まれたのか、その結果はどう解釈すべきなのか――。これらに対する回答をすぐに探し出し、読み直すことができます。明日からの心房細動診療のベースラインを確認する書として、有用性が高いと思います。
『EBM時代の心房細動 25のエッセンス』
メディカルサイエンス社発行、A4版、74ページ
税込み2940円、ISBN:978-4-903843-10-0