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EPISODE 11 TAVIのランダム化比較試験PARTNERの結果明らかに
手術不能例に対しTAVIは標準内科治療より優れる
牧港中央病院・小船井光太郎

2011/01/05

 前回は経カテーテル大動脈弁留置術TAVI、経皮的大動脈弁置換術)の基本的なコンセプトやデバイスの特徴、それから欧米や日本での現況について述べました。TAVIは欧州で急速な進歩を遂げ、外科的大動脈弁置換術AVR)ハイリスク症例を中心に既に2万人以上の患者がこの治療を受けており、治療成績に関する様々なレジストリーデーターが発表され始めました。

 しかし、このレジストリーデーターというものは、「TAVIは低侵襲だし、外科的AVRのハイリスク症例や手術不可能例にはうってつけの治療だろう、いやそうに違いない」という仮定に基づいたアプローチといえます。

 実はこの点が今までのTAVIの弱点であり、「やはりランダム化比較試験(RCT)により従来の保存的治療や外科的AVRとの比較試験が行われるべきだ」という思いは、誰もが抱いていたと思います。既にTAVIが広く普及し始めている欧州では今さらRCTを行う機運にはなく、米食品医薬品局(FDA)という厳格な組織によってデバイスの承認が制限されている米国で、RCTであるPARTNER試験が行われることになりました。

 PARTNER試験は2つのスタディーグループより成り立っています。外科的AVRのハイリスク症例を対象に外科的AVRとTAVIを比較したコホートA(n=700)と、外科的AVRは不可能と判断された症例を対象に標準的内科治療とTAVIを比較したコホートB(n=358)です。今回、米国のTCT2010で、コホートBの1年時点での成績が発表されました。

PARTNER試験コホートBとは

 対象患者は症候性(NYHA II度以上)の重度の大動脈弁狭窄(AS)患者(大動脈弁口面積[AVA]<0.8cm2)であり、循環器内科医と2人の心臓外科医の3人すべてが、「手術は不可能(周術期死亡または重篤な合併症の起こる率が50%以上)」と判断した症例です。

 患者は平均年齢83歳と高齢で、平均STSスコアが11~12、Logistic Euroスコアが30前後とハイリスク症例であり、9割以上の患者がNYHA III~IV度の重度の心不全の状態でした。 4割以上の患者に過去のバイパス手術の既往や慢性閉塞性肺疾患、肺高血圧症の併発を認めました。肝心のトライアルの結果は次項で紹介しましょう。
 

著者プロフィール

小船井 光太郎 氏
(牧港中央病院循環器内科・副院長)
おぶない こうたろう。1996年新潟大医学部卒、東京女子医大循環器内科入局。00年Beth Israel Medical Centerで内科・循環器内科研修。Columbia University循環器内科に移り専門医を取得、07年同科講師、10年より現職。

連載の紹介

小船井&高山の「米国心臓医療レポート」
高山 博夫 氏
(Columbia University胸部外科Assistant Professor)
たかやま ひろお。1996年東大医学部卒。同年同病院外科研修。2000年東大医学部付属病院胸部外科研修。03年University of Washington外科研修。07年Columbia University胸部外科研修。09年講師、11年より現職。

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