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EPISODE 7 こんなに違う、アメリカと日本の「循環器専門医」
インターベンション専門医の初年度年棒が3700万円!
コロンビア大学循環器内科・小船井光太郎

2010/01/08

コロンビア大学インターベンションプログラムのGregg Stone教授と同期のフェロー達(右端が著者、右から2番目がGregg Stone教授)

 米国での卒後研修において、どの科の研修医にも共通する一番の目標は専門医資格(Board Certification)を取ることです。アメリカでは専門医資格が無ければ、その領域の診療は事実上できません。つまり循環器内科についていえば、アメリカにいる循環器内科医のすべてが専門医(Board certified cardiologist)なのです。

 循環器内科専門医資格はAmerican Board of Internal Medicine(ABIM)という、内科系専門医制度を統括する協会によって与えられます。AHAやACCをはじめとする、各学会との直接的な関係や影響はありません。資格を取得するには、(1)3年間の内科レジデンシーを終えて内科専門医を取得していること、(2)3年間のCardiologyフェローシップを修了していること、(3)専門医試験(コンピューターを使った“マルチョイ”を2日間)に合格すること――が必要です。

 では、実際にはどんな手順を踏めば、米国で循環器内科専門医になれるのでしょうか?
まず、米国の医学部を卒業、または日本を含む外国の医学部を卒業して米国医師資格試験(USMLE)に合格すれば、アメリカで卒後研修を受ける資格が得られます。循環器内科医になりたいのなら、まずは内科のレジデンシーに入らなければなりません。全米に内科レジデンシーのプログラムは380あり、毎年7000近くのポジションがあります。そして内科レジデンシー2年目に、フェローシップへの応募とマッチングが行われます。

 Cardiologyのフェローシッププログラムは全米に180あり、ポジション数は約700です。8種類ある内科系専門分野のうち、循環器内科は花形で一番人気ですから、当然競争も熾烈です。ここに優秀な志願者が殺到するので有名プログラムの競争率は100倍を優に超え、最終的にどこにもマッチせずに一般内科に落ち着く医師もたくさんいます。

 米国にあるすべてのレジデンシーやフェローシップのプログラムは、ACGME (Accreditation Council for Graduate Medical Education)という機関によって毎年厳しく審査されています。膨大な書類提出が課され、その後、審査官が各プログラムを訪れて症例やカンファレンスの質と量、教育レベル、労働条件などについて視察を行います。不備があれば、どんな有名プログラムでも即、閉鎖となります。というわけでこれらが保証されたフェローシップを修了すれば診療実績の提出も必要なく、人の症例を借りてサマリーを写して提出するといったことも起きません。

 当然、トレーニングを受ける研修医の側にも高いレベルが要求され、それに満たない場合には特別な指導が行われ、それでも駄目なら次の年度に進めずクビになります。このように米国の研修制度は無事に修了することができれば、試験は知識の確認のためにあるだけですので、8~9割は合格するのが普通です。

 こうして循環器内科専門医になっても、診断カテはできますが、PCIはできません。その先さらにインターベンションのフェローシップ(1年間)とEPS/アブレーションのフェローシップ(1年間)があり、そちらに進むのならさらに競争は続きます。苦労は続きますが、一度研修を終えて専門医を取得してしまえば、職に困ることはあまりありません。

著者プロフィール

小船井 光太郎 氏
(牧港中央病院循環器内科・副院長)
おぶない こうたろう。1996年新潟大医学部卒、東京女子医大循環器内科入局。00年Beth Israel Medical Centerで内科・循環器内科研修。Columbia University循環器内科に移り専門医を取得、07年同科講師、10年より現職。

連載の紹介

小船井&高山の「米国心臓医療レポート」
高山 博夫 氏
(Columbia University胸部外科Assistant Professor)
たかやま ひろお。1996年東大医学部卒。同年同病院外科研修。2000年東大医学部付属病院胸部外科研修。03年University of Washington外科研修。07年Columbia University胸部外科研修。09年講師、11年より現職。

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