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EPISODE 6
救急外来で「車の窓から射精した老婆」を申し送りした私
コロンビア大学胸部外科・高山博夫

2009/11/16

H病院ERにて開胸心マッサージ中のレジデント

 米国の三次救急外来はTVドラマ「ER」さながらです。私が一般外科を研修したプログラムでは、米国北西部をまとめる三次救急病院(H病院)の外傷外科へのローテーションがあります。広範囲からヘリコプターや救急車で患者がひっきりなしに運び込まれ、誇張でなく野戦病院の様相を呈しています。特に晴れた週末は、「千客万来」となります。

 H病院の救急外来には外科と内科があって、外科側は、2年目の一般外科レジデントがtrauma docと呼ばれる責任者になります。救急隊から連絡を受け、様々な病態、状態の急患を素早く診察し、検査のオーダー、診断、コンサルトを依頼――と、多様な業務をインターンや医学生を自分の手足のように使って、12時間のシフトの間、延々とこなし続けます。私はこのtrauma docを、渡米半年目に担当しました。私の長い外科研修経験の中でも、最もストレスの高いものでした。

 12時間のシフトを終えると、次のtrauma docに口頭で申し送りを行います。ある日のこと、80歳代の女性が運転中に衝突事故を起こし、窓から投げ出されて重症を負った症例がありました。

 私は、「Eighty-some-year old female, unrestrained driver, T-boned into another car, and she was ejected from the vehicle… (80数歳の女性がシートベルトをせずに運転中、ほかの車の横っ腹に衝突して、車から投げ出された)」と言うべきところを、

「…and she ejaculated from the vehicle…(衝突して、車の窓から射精した)」と言ってしまいました。

 申し送りを受けていたレジデントは、「そりゃねえだろ」――。

 このような英会話関連のトラブル(笑い話?)は日常茶飯事です。英語をしゃべれるようになるにはどうすればよいか、私も悩まされましたし、よくアドバイスを求められます。簡単な答えは見つかりません。それぞれが自分にあった方法で習得するしかない、と思われます。

著者プロフィール

小船井 光太郎 氏
(牧港中央病院循環器内科・副院長)
おぶない こうたろう。1996年新潟大医学部卒、東京女子医大循環器内科入局。00年Beth Israel Medical Centerで内科・循環器内科研修。Columbia University循環器内科に移り専門医を取得、07年同科講師、10年より現職。

連載の紹介

小船井&高山の「米国心臓医療レポート」
高山 博夫 氏
(Columbia University胸部外科Assistant Professor)
たかやま ひろお。1996年東大医学部卒。同年同病院外科研修。2000年東大医学部付属病院胸部外科研修。03年University of Washington外科研修。07年Columbia University胸部外科研修。09年講師、11年より現職。

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