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身体を触られ、蹴られ、土下座させられた

2016/03/07

図1 医療機関向けの暴力防止啓発ポスターの1例(監修:三木明子・筑波大学医学医療系准教授、横内昭光・慈恵大学法人事務局総務部付渉外室顧問、佐藤太郎・聖路加国際病院院長付参与)

 身体を触られ、蹴られ、土下座させられた――。あるアンケートに寄せられた訴えだ。女性の勤務者が多い医療機関では、患者からのセクシャル・ハラスメントが少なくない。さらに彼女たちを苦しめるのは、相談した上司に「あなたに原因があったのよ」と突き放されることだ。組織を挙げてセクハラ防止に取り組み、それが職員を守るという医療機関全体の強い意思に裏打ちされていることを、職員はもちろん患者にも伝わるようにしなければならない。

 ある地方での講演のときだった。終了後に回収したアンケートに、患者からの暴力を受け続けていたという看護師が書き込んでくれた。そこには「身体を執拗に触られる、蹴られる、揚げ句の果てに土下座させられる」などという体験がつづられていた。そしてこう続いた。

 「看護師は、今までは患者さんの身体と心の状態に配慮し、どんな仕打ちを受けても我慢しなければならないと考えていました。でも、今日のお話で、度を過ぎた患者さんには勇気を持って毅然とした態度を取るべきと教えていただきました。背中を押された思いです。警察に被害届を出します」。この看護師は職歴が10年以上というベテランの人だった。患者からの暴力やセクハラを受けていたのに、長い間、我慢し続けなければならなかった心情を思うと、心が痛んだ。

 もう1つ紹介したい声がある。こちらは看護師となって8年目の人だ。

 「どんなことでも患者の人権が優先されて、看護師の人権は無視されているように思えてなりません。身体を触られたことがあり上司に相談しましたが、『患者さんはそんなつもりはないといっている。あなたの対応が悪かったので仕方がないじゃないか』と言われてしまった。患者から受けた行為で傷ついているのに、その後の対応でさらに傷ついてしまうのです。患者から何をされても仕方がないといった考えは本当にやめてほしい。患者の中には、本当のことを言わない人もいるのです。だからきちっと私たちの言葉に耳を傾けてほしい」。

 私は講演で次のような話をしていた。「お尻や胸を触られることを『軽微』なこととは思わず、その都度、しっかりと患者に注意し、さらに上司に報告をしておくことが何より重要です。患者に黙っていることは、触っても良いのだと誤解を与えることになります。度が過ぎる患者なら、上司とも相談し病院を通して、警察に被害届を出していいのです」。

 看護師さんのアンケートの声を受けて、もっと強調しなければならないことがあったのに気づかされた。それは、「上司はもちろん、経営者も医療機関全体として職員を守るという姿勢を示し、院内暴力やセクハラ対策に取り組まなければならない」という点だ。

連載の紹介

院内暴力・セクハラSOS
患者からの迷惑行為の代表格が、暴言・暴力。一方、女性の就業者が多い医療現場では、セクハラも困った問題です。長年、大学病院で渉外活動を担ってきた横内昭光氏(学校法人慈恵大学総務部渉外室名誉顧問)が代表を務める、警察OBらで構成する院内暴力対策研究会のメンバーを中心に、いざというときの対処法を指南します。
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