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この患者が来なければ朝まで寝てられたのに

2016/02/08

 警察OBとして病院に勤めてみて分かったことがあります。それは、暴力の芽をいかにして摘むかということです。ある患者さんのご主人からこんな話を聞いたことがあります。

 ……それは深夜でした。妻の持病である喘息が治まらず、近くの病院へ向かったのです。他の患者はだれもいない待合室はシーンとしていて寒くも感じられましたが、そんな私たちに「先生を呼んでおりますのでお待ちください」と、対応してくれた看護師さんはやさしく声を掛けてくれました。

 待っている間も妻はせき込み辛そうでしたので、実際よりも待ち時間は長く感じました。

 ようやく若い医師が診察室に入り、間もなく名前が呼ばれましたので、私は妻を抱えるようにして診察室に入ったのです。

 部屋の中では、医師はこちらに背を向けて立っていました。振り向くと白衣の前のボタンを掛けていなかったので、下着一枚が丸見えでだらしなく見えました。そればかりか、大きなあくびをしながら目をこすり、けだるそうに「どうしましたか」と尋ねたのです。

 まるで寝ているのを起こされ、「迷惑な患者が来た。この患者さえ来なければ朝まで寝ていられたのに」という不快な表情が、その言動からありありとうかがえたのです。……

「もう大丈夫」と眠った頃に重大事件が
 私はこの話をうかがって「こんなことでよいのか」と思いました。幸いご主人は暴力に訴えることはなく、クレームも付けることはしませんでした。でも、誰かに話しておかなければとの思いから、私に話してくださったのだと思います。

 私も警察官当時、宿直責任者の勤務経験があります。今夜はもう事件はないと判断し宿直室で仮眠をとると、そんなときに限って重大事件は起こるものです。仲間の警察官が事件関係者を同行し、「起きてください」と私に起床命令を出します。正直「今、布団に入ったばかりなのに」と愚痴りながら、温もりかけた布団を蹴っ飛ばして起きたこともありました。

 また、制服巡査のころ、夜中に不審者を同行したとき、宿直室から大きなあくびをして、目をこすりながら起きてきた宿直責任者に、「何を連れてきたのだ」と迷惑顔で言われた経験もあります。ものすごく嫌な思いをした記憶がありますので、このご主人の気持ちは良く分かるのです。

 こんなことがあってから私は、宿直責任者になったとき、打たれ疲れた身体に気合を入れてリングに上がるボクサーのごとく、鏡に向かい、こわばった顔にマッサージを加えて笑顔を確認し、「さあ来い」と両頬にビンタをいれてから刑事部屋に向かうように努めたものです。

 自分が患者の立場であったら許される言動だったのか――。この若い医師にも、相手を思いやる気持ちが必要なことを思い知る日が来るに違いありません。

連載の紹介

院内暴力・セクハラSOS
患者からの迷惑行為の代表格が、暴言・暴力。一方、女性の就業者が多い医療現場では、セクハラも困った問題です。長年、大学病院で渉外活動を担ってきた横内昭光氏(学校法人慈恵大学総務部渉外室名誉顧問)が代表を務める、警察OBらで構成する院内暴力対策研究会のメンバーを中心に、いざというときの対処法を指南します。
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