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出所した暴力患者の「お礼参り」に怯えた看護師

2015/12/21

 「その節はお世話になりました。刑務所の診療所に通って病気が完治しました。あのとき逮捕されていなければ、もう死んでいたかもしれません」。こう言って深々と頭を下げた男は、私が勤める大学病院ではとても有名な問題患者だった。酒を飲んで暴れては救急車で運ばれてきて、点滴をして楽になると医療者の業務を妨害する――。そんな悪態を何度も繰り返していた。

 郊外に住むその男は夜中に、酔ってけがをしたといっては、救急車を飛ばして40キロも離れた大学病院へやって来た。その上、救急部で点滴を始めて10分もすると自分で点滴を外してしまい、担当する看護師らにちょっかいを出しては業務を妨害していた。

 病院近くのベンチで夜を過ごした男は、翌朝になると2つ、3つの診療科外来を受診。そのたびに自分の診察の順番を早くさせるため、大声で騒ぎ立てた。騒がれて困ると考えた病院は、男の要求を聞き入れて、毎回のように順番を早めてしまっていた。こうした甘い対応は、男に付け入るスキを与えるだけだった。

 やがて、順番を追い越された患者から苦情が届くようになった。他の患者に迷惑がかかっているという深刻な事態を受けて、病院は渉外部に対応を要請してきた。渉外部には複数の警察OBが常駐しており、院内の迷惑行為、暴力行為などに対処していた。

 私たちは多くの職員から話を聞き、この男の問題行動を把握。医師の前ではおとなしく振る舞うも、医師の目が届かないところでは看護師や事務職員らに迷惑行為を働いていた事実が明らかになった。

 今度、迷惑行為があった場合には、私たち渉外部が対応し、暴力行為に及んだ際には110番通報する――。こうした方針を立てて職員らで情報共有を図った上で、私たちはこの男との面談に臨んだ。その際に「医師や看護師らの言うことを聞き、診察の順番を守ります」という誓約書を示して理解を求め署名をしてもらった。その後、しばらくの間は、迷惑行為はなくなっていた。

連載の紹介

院内暴力・セクハラSOS
患者からの迷惑行為の代表格が、暴言・暴力。一方、女性の就業者が多い医療現場では、セクハラも困った問題です。長年、大学病院で渉外活動を担ってきた横内昭光氏(学校法人慈恵大学総務部渉外室名誉顧問)が代表を務める、警察OBらで構成する院内暴力対策研究会のメンバーを中心に、いざというときの対処法を指南します。
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