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医師が知っておきたい「過失」の判断基準

2022/06/28
大島 眞一(大阪高裁 部総括判事)

 こちらの連載は、最高裁判例を紹介する趣旨で始め、最高裁判例のない分野については下級審裁判例を取り上げてきましたが、大体の分野を紹介したように思います。そこで、これから3回に分け、過去の掲載分の「おさらい」も兼ねて、医療訴訟のポイントである(1)医療行為上の過失(注意義務違反)、(2)説明義務違反、(3)医療行為上の過失や説明義務違反と結果発生(死亡等)との因果関係──を取り上げることにします。今回は、(1)の過失についてです。

 医療行為上の過失に関しては、以前の回でも紹介しましたように、裁判所は判断に際して「医療水準」を基準としています(関連記事:裁判官は医師の過失をどのように判断するのか)。医療水準というのは、次の2つの判例によって確立したものです。

 1つ目は最高裁昭和57年3月30日判決(判例タイムズ468号76ページ)で、「注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である」という基準を設けました。それをさらに具体化したのが、2つ目の最高裁平成7年6月9日判決(未熟児網膜症姫路日赤事件・民集49巻6号1499ページ)です。同判決では、「医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきである」としました。

 後者の事案は、未熟児網膜症の発見(診断)と治療について、全国一律に決められるべきものではなく、被告が運営する姫路赤十字病院が先端的な取り組みをしており、そのことを考慮して過失の有無を決めるべきであると指摘。責任を否定した高裁判決を取り消して差し戻したものです。

著者プロフィール

おおしま しんいち氏●1984年神戸大学法学部卒、司法修習生(38期)。京都地裁判事、大阪高裁判事、神戸大学法科大学院教授、大阪地裁判事などを経て、2017年徳島地家裁所長、2018年奈良地家裁所長、2020年2月より現職。大阪地裁では医療訴訟を扱う医事部の総括を務めた。『Q&A医療訴訟』(判例タイムズ社)などの著書がある。

連載の紹介

裁判官が語る医療訴訟の実像
医療訴訟が提起されたらどのようなプロセスを経て和解や判決に至るのか、個々の裁判に影響を与えるリーディング・ケース(重要判例)とは――。大阪地裁で医療訴訟を専門に取り扱った経験を持つ著者が、これまでの経験を踏まえ、医療訴訟の実像を分かりやすく紹介します。
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