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乳腺外科医事件、最高裁判決の根拠と今後の行方

2022/03/03
大島 眞一(大阪高裁 部総括判事)

 今回は、最高裁で今年2月18日に言い渡された刑事判決(乳腺外科医裁判)について考えてみます。

 事案は、外科医として勤務していた被告人が、自身が執刀した右乳腺腫瘍摘出手術の患者である女性Aに対し、抗拒不能に乗じて左乳首をなめるなどのわいせつな行為をしたか、というものです(関連記事:【速報】乳腺外科医裁判の二審有罪判決、最高裁が破棄・差し戻し)。

 検察官は、Aの証言は十分信用することができ、その体験がせん妄に伴う幻覚であった可能性はなく、アミラーゼ鑑定およびDNA型鑑定の結果等もAの証言を裏付けている旨主張しました。これに対し、被告人は、Aが麻酔薬を使用した手術後のせん妄に伴う幻覚を体験していた可能性が高く、アミラーゼ鑑定およびDNA型鑑定の結果等も信用できない旨主張して争いました。

 1審は外科医に無罪判決を言い渡したのに対し、控訴審はそれを取り消し、懲役2年に処しました。これに対し、最高裁は高裁判決を破棄し、本件を東京高裁に差し戻しました(最高裁の判決文は裁判所ホームページから見ることができます)。

著者プロフィール

おおしま しんいち氏●1984年神戸大学法学部卒、司法修習生(38期)。京都地裁判事、大阪高裁判事、神戸大学法科大学院教授、大阪地裁判事などを経て、2017年徳島地家裁所長、2018年奈良地家裁所長、2020年2月より現職。大阪地裁では医療訴訟を扱う医事部の総括を務めた。『Q&A医療訴訟』(判例タイムズ社)などの著書がある。

連載の紹介

裁判官が語る医療訴訟の実像
医療訴訟が提起されたらどのようなプロセスを経て和解や判決に至るのか、個々の裁判に影響を与えるリーディング・ケース(重要判例)とは――。大阪地裁で医療訴訟を専門に取り扱った経験を持つ著者が、これまでの経験を踏まえ、医療訴訟の実像を分かりやすく紹介します。
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