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「○○をしなかったから死亡が早まった」の判断の難しさ

2020/01/29
大島 眞一(奈良地家裁所長)

 「医師が必要な検査を行わなかったために疾病の発見が遅れ、死期が早まってしまった」──。患者側がこのように主張し、訴訟を起こすことは少なくありません。ある行為をしないことを、法律の世界では「不作為」と言います。上記の例は、「医師の不作為と死期が早まったこととの因果関係」が問われる裁判ということになります。今回は、この不作為と因果関係について考えてみます。

 医師等に不作為の過失があり、悪い結果との間に因果関係があるという場合、「ある特定の時点で、本来こうすべきであった」という「作為義務」を設定し、その作為義務が尽くされていれば悪い結果が生じなかったことが高度の蓋然性をもって確かである、と証明されることが必要です(「高度の蓋然性」については、前回の記事をご参照ください)。

 不作為と、生じた結果との因果関係について判示したものとして、最高裁平成11年2月25日判決(民集53巻2号235ページ)があります。以下に、その内容をご紹介します。

著者プロフィール

おおしま しんいち氏●1984年神戸大学法学部卒、司法修習生(38期)。京都地裁判事、大阪高裁判事、神戸大学法科大学院教授、大阪地裁判事などを経て、2017年徳島地家裁所長、2018年奈良地家裁所長、2020年2月より現職。大阪地裁では医療訴訟を扱う医事部の総括を務めた。『Q&A医療訴訟』(判例タイムズ社)などの著書がある。

連載の紹介

裁判官が語る医療訴訟の実像
医療訴訟が提起されたらどのようなプロセスを経て和解や判決に至るのか、個々の裁判に影響を与えるリーディング・ケース(重要判例)とは――。大阪地裁で医療訴訟を専門に取り扱った経験を持つ著者が、これまでの経験を踏まえ、医療訴訟の実像を分かりやすく紹介します。
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