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医師の過失の判断基準は「医療水準」以外にも

2019/05/28
大島 眞一(奈良地家裁所長)

 今回も、医療裁判で医師の過失がどのように認められるかについて考えてみます。

 医師の過失の有無を判断する際の基準となるのが「医療水準」で、医療水準を満たしていないと過失が認められます。医療水準は、前回書きましたように、未熟児網膜症の診療において新しい治療法である光凝固法を実施しなかったこと、あるいは実施している医療機関に転医しなかったことが過失と言えるか、という議論を起点としています。つまり、医療水準が問われるのは、新たな治療法を適用すべき義務があったかどうかが問題となる場面です。

 これに対し、既にそうした議論をするまでもなく、一定の義務が確立しており、その義務からの逸脱の有無・程度を問えば足りる場合には、医療水準を援用する必要はありません。最高裁判決の中には、医療水準について触れることなく、悪しき結果が生じることを予見できたかという「予見可能性」と、その結果を回避する義務(結果回避義務)を果たしたかという観点から、過失の判断をしているものも多くあります。

著者プロフィール

おおしま しんいち氏●1984年神戸大学法学部卒、司法修習生(38期)。京都地裁判事、大阪高裁判事、神戸大学法科大学院教授、大阪地裁判事などを経て、2017年徳島地家裁所長、2018年奈良地家裁所長、2020年2月より現職。大阪地裁では医療訴訟を扱う医事部の総括を務めた。『Q&A医療訴訟』(判例タイムズ社)などの著書がある。

連載の紹介

裁判官が語る医療訴訟の実像
医療訴訟が提起されたらどのようなプロセスを経て和解や判決に至るのか、個々の裁判に影響を与えるリーディング・ケース(重要判例)とは――。大阪地裁で医療訴訟を専門に取り扱った経験を持つ著者が、これまでの経験を踏まえ、医療訴訟の実像を分かりやすく紹介します。
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