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診療拒否が違法か否かを判断する「3つの要素」

2018/06/19
大島 眞一(徳島地家裁所長)

 今回は、医療機関が患者の受け入れを拒むことがどこまで認められるかについて考えてみます。

 医師法19条1項は、「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定めています。この応招義務は、医師が国に対して負う公法上の義務であり、患者に対して負う私法上の義務ではないと解されています。

 そして、近年、医療機関の機能分化や救急医療における地域連携が重視される中、患者の重症度や地域医療の提供体制などと関係なく、医療機関はどのような患者でも引き受けなければならないとする考え方は医療政策的に疑問が大きいとして、応招義務規定は歴史的役割を終えたとする見解もあります。

 もっとも、応招義務の捉え方はともかくとして、医療機関が正当な事由がないにもかかわらず診療を拒んだために患者が死亡するなどした場合には、その医療機関の行為は違法ということができ、患者や遺族は医師や医療機関に対し損害賠償を請求できる場合があると考えられます。そこで、診療を拒むことが違法といえるのはどのような場合なのか検討します。

 まず、緊急性がない患者であれば、専門外である、あるいは休診日や診療時間外などの理由により診療を拒んでも、他の医療機関を受診したり診療時間内に改めて受診すればよいことであり、問題にはなりません。また、かつてその患者が当該医療機関でトラブルを起こしていることを理由として診療に応じなかったとしても、医療行為は医師と患者との間の信頼関係を基礎としているわけですから、それが失われている以上、違法とはいえないと考えられます(東京地裁平成29年2月9日判決、判例タイムズ1444号246ページなど)。

著者プロフィール

おおしま しんいち氏●1984年神戸大学法学部卒、司法修習生(38期)。京都地裁判事、大阪高裁判事、神戸大学法科大学院教授、大阪地裁判事などを経て、2017年徳島地家裁所長、2018年奈良地家裁所長、2020年2月より現職。大阪地裁では医療訴訟を扱う医事部の総括を務めた。『Q&A医療訴訟』(判例タイムズ社)などの著書がある。

連載の紹介

裁判官が語る医療訴訟の実像
医療訴訟が提起されたらどのようなプロセスを経て和解や判決に至るのか、個々の裁判に影響を与えるリーディング・ケース(重要判例)とは――。大阪地裁で医療訴訟を専門に取り扱った経験を持つ著者が、これまでの経験を踏まえ、医療訴訟の実像を分かりやすく紹介します。
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