
イラスト:畠中 美幸
A診療所で勤務しているB子は、2年前、大卒者として中途採用した事務職員だ。大学進学率の上昇に伴って、医療機関の求人に応募する事務職員の中にも大卒者の割合が高まっている。B子もそんな求職者の1人だった。
あるとき、院長は、休憩時間にスタッフたちが学生時代の話をしているのを耳にした。話の内容は卒業式に関することで、他の職員たちが色々と思い出話をしている中、B子は「大学は中退したので高校の卒業式までしか知らず、それが心残り」というようなことを言っていた。
不審に思った院長が、採用時にB子から受領した履歴書を見てみると、大学を卒業した旨が書かれていた。実際に大卒でないとなると、問題になるのが賃金だ。A診療所では、採用時の賃金設定において大卒者と高卒者の賃金スタートラインを別に設定しており、大学中退の場合には高卒者の賃金を適用している。もしB子が大学を卒業していないのであれば、これまで賃金を過剰に支払っていたことになる。
院長は、裏切られたような気持ちになり、徐々に怒りがこみ上げてきた。本来の支払い額との差額分を返してもらった上で、できれば辞めてもらった方がいいのではないかと考え、社会保険労務士に相談をした。