
イラスト:畠中 美幸
A診療所は、地方ののどかな街にある耳鼻咽喉科診療所である。通勤にはやや不便な場所にあり、公共交通機関は1時間に1本程度と少ない。そのため、職員はマイカー通勤が主流だが、事務職員のB子は電車とバスで通勤している。
B子は実家で両親と同居。実家には自家用車があり、B子も運転免許証は有しているが、同居家族が自身の通勤で車を使うため、B子は自由に使えない状況にある。車が欲しいと思っているが、学生時代の奨学金の返済などもあり、購入には至っていない。多少不便さを感じつつも、電車とバスの時間に合わせて通勤している状況だという。
そうした中、A診療所のスタッフたちは、B子の彼氏と思われる人物が毎日のように退勤時間に迎えに来る光景を見かけるようになった。スタッフからその話を聞いた院長は、当初は気にも留めなかったが、毎月、通勤手当として公共交通機関の運賃相当分を支払っているので、何だか腑に落ちなくなってきた。特に地方では、大都市部と異なり公共交通機関の料金が高いため、毎月の通勤手当も結構な金額となっている。そこで院長は、顧問の社会保険労務士に相談をしてみることにした。