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3つの裁判例に見る「正しい患者への謝り方」

2019/08/28
桑原博道、松本龍馬(仁邦法律事務所)

 医療現場で、「後々トラブルになったときに備え、患者や家族に謝罪しないように」と言われることはよくあると思います。では、謝罪をすると、実際に医療訴訟で不利に扱われるのでしょうか。この点について、裁判例を3つ紹介します。

 1つ目の裁判例は、訪問診療、訪問看護を受けていた在宅患者に左大腿骨骨折が見つかり、その後、大腸癌で死亡した事例です。

 骨折が見つかる前、訪問看護師による可動域(ROM)運動が行われていました。その内容は、(1)患者の足趾に対して指によるマッサージを行う、(2)踵に対して内旋、外旋を行う、(3)下腿に対して、末梢から中枢へ揉むようにマッサージを行う、(4)膝蓋骨に対し、左手で膝窩を支えて右手の平で膝蓋骨を包み込むように回転させる、(5)膝に対しては、踵を左手で支え、膝を右手で支えて、膝の屈曲による抵抗を感じない程度に5回程度屈伸を行う――というものでした。骨折が判明した際、ROM運動を行った担当看護師は謝罪をしていました。

 この事例においては、ROM運動を行う前に可動域測定を行い、担当看護師に限度を超えたROM運動を行わないよう指導・教育すべき過失があるかなどが争点となり、裁判所は次のように判断しました(平成25年11月1日福岡地裁判決)。

連載の紹介

日常診療に生かす医療訴訟の教訓
患者とのトラブルで頭を悩ませないようにするためには、日々の診療で紛争予防を意識した対応をしておくことが欠かせません。本連載では、医療機関側の弁護活動を行う仁邦法律事務所(東京都港区、桑原博道所長)の弁護士が、実際の裁判例も参照しつつポイントを解説します。

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