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「格安開業」の話に乗った医師の失敗

2019/11/08
岸部 宏一(横浜医療法務事務所)

 大学病院に勤務するS医師(当時40歳代)は、数年前から診療所の開業を考えていましたが、資金もツテもありませんでした。

 そんな中、「格安開業」という言葉にひかれてネットの広告を見てみたところ、新しく開設される高齢者住宅の1階に、なんと自己資金ゼロで開業できると書いてありました。軽く話を聞くくらいなら問題ないだろうと問い合わせメールを送ったところ、その日のうちに携帯電話に連絡が入り、翌週末に現地事務所で担当者と会うことが決まりました。

 案内された現地事務所は、高齢者住宅の工事現場の向かいに建てられたショールームで、説明に当たったのはF部長と名乗る男性。高齢者住宅を開設する地元の企業の幹部で、ホーム開設の責任者のようです。話の内容は、以下のようなものでした。
(1)クリニックの建物、内装などは全て会社側で用意する。
(2)設備・備品、医療機器などは医師の希望を聞いた上で会社が用意する。
(3)報酬は、今の年収分の固定給を保証し、患者が増えたらインセンティブ給も考える。
(4)社会保険などは全て会社の側で完備している。
(5)職員も会社から派遣するので何も心配しなくてよい。
(6)外来診療はそれほど力を入れなくてよいが、高齢者住宅の入居者には24時間対応をお願いしたい。

 自分で開業するものと思っていたものの、「報酬を支払う」という話を聞く限りでは勤務医のようでもあり、半ば拍子抜けしたような気持ちでその日は帰宅しました。

連載の紹介

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