Case52 新人スタッフを多く採用した整形外科診療所
今回、覆面調査に伺ったのは、田園風景が広がる郊外に立地している比較的大規模の整形外科クリニックです。
1年ほど前、このクリニックの院長から、受付スタッフをどう育成したらよいか悩んでいるとの相談がありました。院長の話によると、専門学校を卒業した新卒スタッフを3人、一度に採用したのですが、コロナ禍で満足な研修を受けさせることができなかったこともあり、社会人としての心構えが全く育っていないとのことでした。患者対応のレベルも低いようで苦情も相次いでいたようです。
「今の若い子はこんなものなのでしょうか」と言いつつも、苦情の内容や他のスタッフからの報告からは院長の想定を超えるような振る舞いもあったようです。具体的には、朝、挨拶をしない、常に不機嫌で話しかけづらい、業務開始時刻ギリギリに出勤して周りのスタッフのひんしゅくを買う、掃除をしない、休憩時間は3人で固まり他のスタッフと全くコミュニケーションを取らず、スマホを見ているか大声で笑っている、ドアの開け閉めが乱暴、勤務時間中も姿勢が悪く、ダラダラとしている、返事がない、ミスをしても謝らない……などなど、挙げればきりがないほどです。
しかし、このような状態でも、院長も事務主任も注意ができないまま日々が過ぎていたそうです。なぜなら、「社会人に対して、こんな当たり前なことを注意する必要があるのか」「当然、頭では分かっているのにこんな振る舞いなのだから、注意するのは逆効果なのではないか」と戸惑っていたからです。
そこで、まずこのスタッフがどのような対応をしているのか、覆面調査で客観的に評価した上で、患者接遇の基本と社会人の一般常識としてのビジネスマナーを伝えることになりました。院長や事務主任の価値観を若者に押し付けるような印象を和らげ、上司や組織への反発を減らす目的もありました。
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著者プロフィール
榊原陽子(マザーリーフ代表取締役)●さかきばら ようこ氏。全日本空輸の客室乗務員を経て2002年に社会保険労務士として開業し、2006年、医療・介護事業者向けスタッフ教育事業などを手掛けるマザーリーフを設立した。愛知文教短期大非常勤講師(ホスピタリティ論)。

連載の紹介
榊原陽子のクリニック覆面調査ルポ
トレーニングを受けた調査員が客を装ってサービスをチェックする覆面調査。この連載では、医療機関向けの覆面調査を手掛けるホスピタリティコンサルタントの榊原氏が実例を通して、院長が気付きにくい問題点と解決策を浮き彫りにします。なお、個人を特定できないよう、事例は一部変更を加えています。
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