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院長が癌で休業、減収の影響をいかに抑えたか

2015/11/09
八木橋 泰仁(税理士法人ファシオ・コンサルティング)

 開業して10年を迎えた内科医のA医師(50歳)。朴訥とした喋り口と優しそうな雰囲気が受けて、年間4200万円(月350万円)程度の売り上げ、2人の看護師、2人の事務職員という、個人開業としてはそこそこの規模になっており、法人化を検討していた。

 開業時の借入金がまだ残っていることもあり、月の固定費と返済で少なくとも220万円の現金支出があり、家族の生活費や税金などを考えると、どんなに少なく見積もっても320万円程度は必要な状況だった。

 院長は生来健康だったが、「念のため」と思って人間ドックを受けたところ、肺癌が発見された。病期はまだI期であったが、手術後、退院し復帰するまでおおよそ3~4カ月はかかり、この間に休業すると売り上げがゼロになる。化学療法と放射線治療のための受診を考えると、退院後も半年程度は定期的に休診せざるを得ない。定着している患者が離れていくことも覚悟しなければならない状況だった。

スタッフは継続雇用することに
 顧問税理士に相談したところ、以下のような方針で対処しようという話になった。

 まずスタッフに関しては、今後のことを考えると、雇用をそのまま継続する前提で考えることが望ましいと判断した。特に看護師は、再度同様レベルのスタッフを採用するまでの期間とコストを考えると、ここで辞めてもらうのは非常に厳しい。そこで、事務職員を含めて雇用を継続することにした。

 しかし、完全に休診の期間を4カ月とすると、現金支出分の1280万円は少なくとも必要だ。その上、化学療法と放射線治療は、退院後毎月1週間程度かかると考え、この期間は売り上げを半減と想定。退院後、元の患者数に戻るまでの期間を2年として計算し、この間は平均30%減として計算したところ、さらに2220万円は赤字を覚悟しなければならないという結果になった。合計3500万円もの金額となる。

 顧問税理士から紹介された社会保険労務士に相談したところ、休診(休業)中については、平均賃金の60%を保障すればよいという(労働基準法26条)。もちろん、100%を保障できれば、なお良いところだが、60%よりは気持ち多めくらいでお願いし、少しでも支出を抑えることにした。

連載の紹介

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診療所経営を軌道に乗せたものの、院長が病に倒れ長期休診、場合によっては志半ばで閉院を余儀なくされることもあります。そうした事態に陥ったとき、どんな対応を取ればよいのか、普段から行っておくべきリスク管理とは——。診療所運営支援の経験豊富な専門家が実例を基に解説します。
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