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アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)2014レポート
泌尿器がん治療は免疫療法の時代へ

2014/06/25
三浦裕司(虎の門病院臨床腫瘍科)

 第50回アメリカ臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology;ASCO)が2014年5月30日から6月3日まで、例年通り、イリノイ州シカゴで開催されました。私は腫瘍内科医として、特に泌尿器腫瘍を専門としているため、この分野にかかわるセッションに主に参加しました。

 ASCOでは、泌尿器学(科)は“urology”ではなく“genitourinary(GU)”と表現されています。この2つの言葉、Wikipediaで調べてみても定義にあまり違いはないようですが、一般的に、外科を専門とする泌尿器科医を“urologist”、腫瘍内科医を“GU medical oncologist”と使い分けているようです。

 日本ではまだGU medical oncologistの存在はまれですが、ASCOに参加して驚いたのは、肺がん、乳がん、消化器がんに続くくらいにGUを専門とする医師が多いことでした。GUに関する口演はASCOの中でも最も大きい会場の一つで行われ、それが満席になるほどでした。確かに、罹患数や近年の新薬の開発傾向を考えると、前立腺がんをはじめ泌尿器腫瘍は主要ながん種の一つであり、それに伴いGU medical oncologistの需要が高まっていることは容易に想像できます。

 さて、今年のASCOにおけるGU領域の大きな話題は、プレナリーセッションに前立腺がんの演題が選ばれたことでした。ASCO presidentのDr.Hudisは、後述する試験の結果に対して“These results demonstrate how we can use ‘old tool’ in new”と、「温故知新」を思わせるコメントをしました。

 新薬の開発については、この10年間、チロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor;TKI)が主役でしたが、この数年は免疫療法(immunotherapy)の勢いが増してきており、今年のASCOのGU領域でも主役の交代を感じさせる演題がいくつか発表されました。

前立腺がん
 前述のように、最も注目された演題は、プレナリーセッションで発表された「新規に診断されたホルモン感受性前立腺がんに対する化学ホルモン療法対ホルモン療法の第III相試験」(LBA ♯2)でした。新規に診断されたホルモン感受性の転移性前立腺がんを対象として、アンドロゲン除去療法(ADT)+ドセタキセル(D)(75mg/m2、3週間隔、6コース)の併用療法とADT単独療法を、1対1の割合で無作為化割り付けした第III相試験です。主要評価項目の全生存期間(overall survival;OS)の結果は、ADT+D群の中央値が57.6カ月に対して、ADT単独群で44カ月であり、ハザード比は0.61(95%信頼区間:0.47‐0.80、p=0.0003)と、ADT+D群で統計学的有意な延長を認めました。

 また、腫瘍量別のサブグループ解析において、high volume(4個以上の骨転移を有する、もしくは臓器転移を有すると定義)サブグループでは、全体の結果と同様にADT+D群vs. ADT単独群のOS中央値がそれぞれ49.2カ月、32.2カ月(ハザード比=0.60、95%信頼区間:0.45‐0.81、p=0.0012)と、ADT+D群で統計学的有意な延長を認めました。一方、low volumeサブグループでは、OS中央値は両群ともに達せず、ハザード比=0.63、95%信頼区間:0.34‐1.17、 p=0.1398と、統計学的に有意な差を認めませんでした。

 本試験は、ホルモン感受性の転移性前立腺がんにおいて、ドセタキセルをより早期に投与することがOSを延長させることを示した初めての試験です。ドセタキセルの継続投与でなく6コースのみの追加で、これだけOSにおける上乗せ効果が示せるのであれば、実臨床に大きなインパクトを与えると言えます。

 しかしながら、本試験の追跡期間は29カ月とまだ短く、ADT単独群の病勢増悪後のドセタキセル投与が33%であることなどから、今後の追跡データの結果を待つ必要があります。また、本試験では、high volume症例がドセタキセル追加のよい適応と結論されていますが、このhigh volume症例をより正確に定義する必要があります。このように、本試験の結果を実臨床にどのように応用するのか、今後さらなる検討が必要と考えます。

腎がん
 腎がんに対して、わが国では4つのTKI、2つのmTOR阻害薬が承認されています(海外ではこれにベバシズマブが加わる)。これらの薬剤は転移性腎がんの治療に大きなパラダイムシフトをもたらしましたが、その毒性の強さから、どのタイミングで治療を開始するべきかという疑問が臨床現場には生じています。このクリニカル・クエスチョンに対して、Cleveland Clinicから、前向き観察研究が発表されました(abstract ♯4520)。

 この試験では、無症状で前治療歴のない転移性腎がんを対象として、無治療の経過観察が行われました。登録された52例のうち74%がHeng’s criteriaによる予後中間群で、必ずしも予後良好群だけが対象となっていないことは重要な点です。主要評価項目の、治療開始までの期間中央値は14カ月で、1年、2年の時点で経過観察を継続できた割合はそれぞれ58%、33%でした。

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