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がん診療UP TO DATE トピックス

一般内科的知識の重要性

2014/04/03
門倉玄武(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科助教)

 私はこれまで、内科医になりたての後期研修の間に、拠点病院以外での中小病院で一般内科診療に当たりつつがん診療に携わってきました。現在、がん薬物療法専門医の認定を取るために勉強中の身ですが、初期研修が終了してすぐに薬物療法の専門医認定を取るための研修プログラムがある病院で研修したわけではなく、自分のキャリアを考えると周囲と比較して遅れてしまっていることは否めません。

 しかし、これまで行ってきた一般内科診療が無駄であるとは決して考えたことはなく、最近ではむしろ自分の大きな支えかもしれないとも考えるようになってきました。この場が適切かどうかは分かりませんが、僭越ながらこれまでの自分の研修を振り返りつつ、一般内科診療の重要性について考えていきたいと思います。

地方小中規模病院での後期研修
 私が後期研修先として選択した病院は、長野の片田舎の病院でした。後期研修を始める段階で「がん薬物療法に携わりたい」という希望はあり、中核病院で研修することも考えましたが、がんのみではなく一般内科的なベースをしっかり構築したいと考え、総合診療科が盛んでなおかつ薬物療法を専門科として標榜している病院を選択しました。

 医師も不足気味の地方小中規模病院ですので、自分に回ってくる仕事も多く、研修している科と関係なく週1回以上は内視鏡や救急当番があり、救急外来では二次以上の重症患者が搬送されてくることもまれではなく大変でした。しかし、救急や当直帯で自分が入院させた患者に対してある程度自由に主治医となることができたため、様々な内科疾患を経験することができました。また、規模の小さな病院でしたので、科間の障壁がなく上級医にスムースにコンサルトすることができました。

 研修を始めてまだ間もない、ある晩の出来事でした。痙攣および意識混濁を主訴とする50歳代のアルコール多飲歴を有する患者が搬送されてきました。とりあえず初療室で痙攣を止め、集中治療室に入院させたまではよかったのですが、その後1時間に1回痙攣し続け、そのたびにジアゼパムを打ち続けました。呼吸が止まりかけたらバッグバルブマスクを揉んで、いっそ挿管してミダゾラムを持続点滴し呼吸器に乗せるほうが楽かもしれないなどと思い、眠れぬ夜を過ごしました。

 翌朝一番で総合診療部に「もう駄目です、僕には手に負えません」と音を上げてコンサルトしたところ、ビタミンB1をあっさり静注され、痙攣はピタッと止まり、意識もクリアになりました。

 別の晩のことです。90歳近い重症心疾患を抱えるおばあちゃんで、時々少量の血便があり、CT上で上行結腸に腫瘤があるものの閉塞はなく、年齢と全身状態を考えると精査はせずに経過を見ましょうと外来で言われていた患者さんが、突然の全身痛による体動困難と発熱で救急搬送されました。搬送時は苦悶様表情を呈し、全身がどうやら痛そうだが意思疎通が難しく病歴も取れない。身体所見では両側四肢末梢がむくみっぽく、採血上は白血球およびCRPが著明に上昇するも胸部X線撮影では心胸郭比に明らかな増大はなさそうで、胸水も認めませんでした。

 とりあえず浮腫があり、心不全の増悪かよく分からないから血液培養を取って、高齢だからNSAIDsは使いづらいからと、アセトアミノフェンの坐薬を入れつつ、少量の持続補液で一晩経過観察しました。翌朝一番で総合診療部に「もう駄目です、僕には手に負えません」と音を上げてコンサルトしたところ、ステロイドをあっさり静注され、その翌朝には患者は端坐位で何事もなかったかのように茶をすすっていました。

 救急外来や内科外来に初診のがん患者が受診することや、ドックで自分が内視鏡を行った患者に進行がんが見つかることもありました。この時点で最寄りのがん拠点病院に紹介するというのが本来のかたちかもしれませんが、地域の拠点病院も基本的にはパンク状態にあるため、非拠点病院でもがん診療に当たることが多いのが実際でした。

 内視上は明らかにがんなのに生検ではがんが認められず、本当にがんじゃないのか、内視鏡専門医ではない私の手技が至らないからじゃないか、などと思い悩み、毎週内視鏡を強いて生検を繰り返した60歳代の男性がいました。その患者は結局3回目の生検でsignet ring cell(印環細胞)が検出され、病変部が予想外に広範囲であったため外科で胃全摘術が行われました。補助療法としてS-1を内服してもらいましたが、4カ月目に再発、上級医のバックアップの下で複数の化学療法を行うも、術後11カ月目に治療手段が途絶えました。

連載の紹介

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日経メディカルブックス『がん診療UP TO DATE』の著者陣によるリレーエッセイです。がん治療に関する最新の話題や、日常診療の中で遭遇したエピソードなどを、自由な形式で綴ります。

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