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がん診療UP TO DATE トピックス

薬剤師をもっとがんの現場に!

2014/03/27
此松晶子(日本医科大学武蔵小杉病院薬剤部)

 私ががんの患者さんとかかわるようになったのは、2007年に当院の外来化学療法室が開設されたときです。入職から4年間、薬剤部内の調剤業務中心で患者さんと会話をする機会はほとんどありませんでした。外来化学療法室開設初日、抗がん剤のミキシングを終え、調製した薬剤を持って患者さんのベッドサイドへ行き、自己紹介と薬剤の説明、副作用について患者さんに話したとき、手も足も声もガチガチと震えていたことを昨日のことのように覚えています。

 患者さんは医師の診察後、外来化学療法室に来室しますが、患者さんに薬剤説明をしていると、医師には言っていなかった様々なことを聴取することがあります。

 「口内炎がひどいと先生に言ったら軟膏を出してくれた。最初は塗れば治っていたんだけど、最近、寝ているときに口が乾燥してどうにもならないから、その軟膏をたっぷり塗って寝ているんだ。そうすると調子が良いよ」とおっしゃる患者さんがいました。

 1サイクル21日間の治療であるにもかかわらず、処方はステロイド外用剤14本。念のため口腔内を見せてもらうと白苔のようなものがあったので、主治医に報告し、皮膚科受診となりました。口腔内カンジダ症の診断でミコナゾールゲルに処方変更となり、薬剤師として処方支援することができました。

 患者さんは医師の前で「口内炎がつらいので薬を欲しい」と言っただけかもしれません。口内炎がつらく、薬でなんとかなるならと医師が処方したのかもしれません。しかし、ここで薬剤師が口腔内の原因が真菌であることを疑ったことで、重篤な感染症を防げたと思います。

 また、ドセタキセル投与中の患者さんからは、「最近すぐに息が切れちゃうんだよね。歳のせいなのかな」とのお話を伺いました。私はドセタキセルによる体液貯留、胸水を疑い、医師に休薬を提案し、了解が得られました。その後の経過を心配していた矢先に患者さんから声をかけられ、「休薬することでがんが大きくなるのは心配だけど、息切れが治って昔みたいに歩けるようになったよ」と伺いました。この患者さんは、その後に抗がん剤治療を再開することはありませんでしたが、自分の足で歩いて外来通院している様子を見かけることがありました。

 患者さんから「お医者さんは忙しいですもんね」「先生の前に座ると、聞こうと思っていたことをつい忘れちゃうのよ」とのお話を伺います。患者さんが帰宅する前に、情報伝達や処方提案など患者さんと医師の両者をサポートすることも、外来化学療法にかかわる薬剤師の役割の一つだと学びました。

 がん患者さんにかかわる薬剤師としてまだまだ力不足ですが、少しでも患者さんの役に立てるよう、これからも精進したいと思います。

連載の紹介

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日経メディカルブックス『がん診療UP TO DATE』の著者陣によるリレーエッセイです。がん治療に関する最新の話題や、日常診療の中で遭遇したエピソードなどを、自由な形式で綴ります。

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