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頭部の画像診断

脳炎・髄膜炎の画像診断

2013/08/15
岡田 務(天理よろづ相談所病院放射線部)

 ※この記事は「臨床研修プラクティス」(文光堂)2008年12月号の特集を転載したものです。

●中枢神経系の感染症は発症形態、症状が多彩で、画像検査にて異常所見を呈さない場合が多く見られます。また、画像所見も非特異的であることが少なくありません。

●このように中枢神経感染症における画像診断の役割は限定的なものであり、一部の典型像を呈する感染症の同定、他の頭蓋内病変の除外が主体です。感染症の診断においては臨床情報、他の検査所見が不可欠です。一方、病変範囲や病勢の把握、治療効果判定には画像診断が他の臨床検査と並んで主要な役割を果たします。


中枢神経系の感染症はどのように分類される?

 他の部位の感染症と同様、中枢神経系の感染症はその原因微生物による分類、感染部位による分類が可能です。感染部位としては大まかに(1)髄膜炎:髄膜および脳表、(2)「脳炎:脳実質内、と分類されます。原因微生物は(1)細菌性、(2)ウイルス性(無菌性)、(3)その他(結核、真菌、寄生虫)に分類されます。非感染性に髄膜炎様所見を呈する疾患(癌性髄膜炎、サルコイドーシス、悪性リンパ腫)もあります。


1.髄膜炎

 炎症部位により(1)軟膜炎(leptomeningitis)、(2)硬膜炎(pachymeningitis)に分類されます。髄膜炎の診断には髄液検査が不可欠です。しかし、脳圧亢進症状が疑われた場合、脳圧亢進を来しうる占拠性病変の除外が必要になります。

 髄膜炎疑い症例における初回頭部CTの役割は占拠性病変の除外です。髄液検査が行われれば感染の有無は明確になりますので、画像診断の役割は病変の拡がり診断へと変化します。


2.脳炎

 脳実質内の炎症のうち、境界不明瞭なびまん性炎症を指します。多くはウイルス感染による急性脳炎を指します。その他、ウイルス感染に続発する急性脳症、慢性進行性脳症、ウイルス感染に伴う免疫反応も見られます。

 脈絡叢や脳室上衣に感染が及べば脈絡炎や脳室炎、脳の細菌感染巣辺縁に被膜が形成されると脳膿瘍、頭蓋底から炎症が波及して下垂体や海綿静脈洞に膿瘍を形成する場合もあります。

 以下、病原微生物ごとに個別に解説します。


3.原因微生物による特徴

1.細菌性(化膿性)髄膜炎
 血行性、隣接する化膿巣からの波及により細菌が生着、軟膜からクモ膜下腔へと滲出物が拡散、脳槽や脳溝が滲出物で充満します。これらの滲出物を反映して脳槽、脳溝はCTでは脳脊髄液より軽度高吸収、MRIではFLAIR像にて脳槽、脳溝に軽度の信号上昇を認めます。

 これらの所見はクモ膜下出血とも似ていますが、造影MRIにより鑑別可能、髄膜に沿ったびまん性の造影効果を認めます。画像診断にて髄膜増強効果を認める場合、硬膜増強(dura-arachnoid)パターンと軟膜増強(pia-subarachnoid)パターンに分類されますが、化膿性髄膜炎はびまん性の軟膜増強パターンを呈する場合が多く見られます。

 細菌性大脳炎に対する治療が奏効せず、大脳の化膿性炎症が遷延すると炎症巣辺縁に被膜形成を来し、脳膿瘍となります。膿瘍は内部に壊死、脳実質の破壊産物、線維素析出などを含む膿が見られ、拡散強調画像にて著明な高信号を示します。辺縁には結合織増殖により形成される被膜が存在し、MRIではT2強調画像にて低信号を呈し、強く造影されます。

 細菌感染のうち、梅毒は他の細菌とは異なる形態を呈します。詳細は省略しますが、神経梅毒は無症候型、髄膜血管炎型、脳実質型(進行麻痺、脊髄癆、脳表ゴム腫)に分類され、画像も病態を反映して無所見から腫瘤形成、萎縮まで多彩な所見を呈します。

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