Cadetto.jpのロゴ画像

臨床研修プラクティス:腹部エコーをマスターする

こんなときにはエコーの出番!
腹部外傷と聞いたら!

2011/09/22
井戸口孝二(神戸大学医学部附属病院血管内治療センター)、横田順一朗(市立堺病院)

 ※この記事は「臨床研修プラクティス」(文光堂)2009年8月号の特集を転載したものです。

 外傷の初期診療における超音波検査の目的は、治療を優先すべき損傷の発見、つまり、バイタルサインを脅かすような出血がないかどうかを確認することです。臓器を詳細に観察する通常の超音波検査とは目的が異なることを十分に理解して臨む必要があります。


■はじめに

 超音波検査は、救急領域においても診断や治療目的に頻用されていますが、近年、特に外傷初期診療における有用性が重要視されています。外傷初期診療における超音波検査の目的は、治療を優先すべき損傷の発見であり、すなわちバイタルサインを脅かすような出血の有無を確認することになります。その検査法はFASTと命名され、臓器の形態異常を詳細に観察する一般的な超音波検査とは一線を画しています。

 本稿では腹部外傷に対する超音波検査について、総論にてFASTを取り上げ、各論にて代表的な腹部臓器損傷を解説します。

FASTのことを知っておこう

1.FASTとは
 FASTとは、focused assessment with sonography for traumaの略です。外傷患者に対して、特定の部位のみを短時間で観察する迅速簡易超音波検査法です。主たる目的は、腹腔内出血、心タンポナーデおよび大量血胸の検索であり、primary survey(メモ参照)の一環として蘇生(resuscitation)と同時進行で行います。あくまで循環動態に影響を及ぼす内出血を検索することが目的であり、損傷臓器の特定や損傷部位の精査は一切行いません。さらに、FASTは繰り返し施行することが重要であり、初回のFASTが陰性であっても安心はできません。

メモ primary survey
 生命維持の生理機能に基づき、蘇生の要否を判断する初期診療を言います。すなわち、気道、呼吸、循環、中枢神経系の順に評価し、生理学的徴候の異常の発見に努めます。

2.FASTの手技
 プローブはコンベックス型を選択します。走査部位は6ヵ所であり(図1)、心嚢液の検索(pericardial area)に引き続いて胸腔・腹腔内の検索を行います。腹腔内出血に対しては、右上腹部(perihepatic area)、左上腹部(perisplenic area)、下腹部(pelvic cavity)の順に検索します。その際、右上腹部に引き続いて右胸腔内を、左上腹部に引き続いて左胸腔内を観察してください。以下に各走査部位におけるポイントを解説しますが、特に腹腔内については同一症例の腹部CTを提示しますので、エコー像と合わせて3次元的なイメージを膨らませてください(次ページの図2)。これらのCTを見ればよくわかりますが、腹腔内出血はまず仰臥位における最深部に貯留します。つまり、FASTではこの最深部を観察することになります。

この連載のバックナンバー

この記事を読んでいる人におすすめ