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臨床研修プラクティス:抗菌薬をマスターする

初期治療選択の基本(後編)

2015/01/22
飯沼由嗣(金沢医科大学臨床感染症学)

 ※この記事は「臨床研修プラクティス」(文光堂)2008年10月号の特集を転載したものです。

4.抗菌薬投与のポイント

(1)重症度に応じた抗菌薬の選択を行う
 髄膜炎や重症肺炎、好中球減少時の発熱、Septic shockが疑われる場合など非常に重篤な感染症では、抗菌薬の選択の失敗は許されないため、起因菌として可能性のある菌に対して有効な広域抗菌薬を投与します。スペクトラム拡大のために併用療法を行う場合もしばしばあります(グラム陰性菌とグラム陽性耐性菌をターゲットとした広域セファロスポリン+抗MRSA薬の併用など)。

 しかし、どんなに重篤な感染症でも、起因菌が感受性菌と判明すれば、単剤かつ狭いスペクトラムの抗菌薬へ速やかに変更しなければなりません(De-escalation)。Empiricな抗菌薬投与での広域抗菌薬投与を、感受性がある薬剤だからと言ってそのまま安易にTarget治療に適用することがないよう十分気をつけてください。

(2)安易な抗菌薬併用は行わない
 抗菌薬の併用の目的は主に3つあります。1つめはEmpiric治療における抗菌薬のスペクトラム拡大です。前述のとおり、特に治療の失敗の許されない重症感染症では、起因菌を広くカバーするためにしばしば併用療法が行われます。また、Target治療においても、有効抗菌薬の異なる複数菌感染が疑われた場合には、併用療法を行います。

 2つめは、抗菌薬の相乗効果を期待して行われる場合です。例えば、緑色レンサ球菌による生体弁心内膜炎の治療におけるPCGとGMの併用、緑膿菌に対する広域ペニシリンとアミノグリコシドの併用、耐性肺炎球菌髄膜炎に対するCTRX(CTX)+VCM、クリプトコッカス髄膜炎に対するアムホテリシンB(AMPH-B)とフルシトシンの併用、などです。また、少し特殊なケースとなりますが、長期にわたる感染症治療を行わなければならない場合の耐性菌出現の予防(結核、HIV感染症の治療など)でも併用が行われます。

 上記以外では、βレンサ球菌による毒素性ショック症候群では、PCGと毒素産生抑制のためにクリンダマイシン(CLDM)の併用も行われますが、抗菌薬の併用は、副作用やコストの増大、広域抗菌薬と同様に耐性菌誘導や常在細菌層のかく乱など問題点も多く、根拠のない併用は避けるべきです。

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