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臨床研修プラクティス:病院当直でこんな症状を訴えられたら

腹が痛い、苦しい(後編)

2014/10/30
笹壁弘嗣(新庄徳洲会病院外科)

 ※この記事は「臨床研修プラクティス」(文光堂)2008年6月号の特集を転載したものです。

3.必要最低限としてどのような検査をすべきか?

1)上腹部痛で虚血性心疾患が疑われるときは、まず心電図から確認します。全血球数で、核の左方移動を伴った高度な白血球増多があるときは、細菌感染が強く疑われます。検尿では、尿路感染症での白血球や、尿路結石での赤血球に注意します。黄疸があると、尿は紅茶色になり、よく泡立ちます。妊娠の可能性があるときは尿中hCGを調べます。

2)血液生化学検査は、一つ一つの項目を吟味して出すように指導されているかもしれませんが、コスト面では大差なく、見落としも少なくなるので、各病院で肝機能・腎機能・血糖・アミラーゼ・CRP・電解質など、一通りがセットされているものを使ってスクリーニングするほうがよいと思います。BUNやCrは脱水や腎機能の評価に役立ち、造影剤使用の可否や薬物の量の調整にも有用です。アミラーゼは膵炎と関連づけられますが、中等度の上昇は、腸管の絞扼や虚血、卵巣腫瘍の茎捻転、穿孔性消化性潰瘍でも見られます。逆に、重篤な膵炎で正常のこともあります。

3)胸部レントゲンは、腹腔内遊離ガスの検出のほかに、下葉の肺炎の診断に役立つことがあります。腹部レントゲンは臥位が基本で、鏡面像や体位で移動するものを評価する際には立位でも撮ります。消化管穿孔が疑われるときに胸部レントゲンが立位で撮れないときは、左側臥位を5分以上固定してから腹部を撮ります。

4.危険な徴候、Warning signは何か?

1)急性腹症では、循環血液量の減少や敗血症からショックを起こすことがあり、意識レベルの低下や不穏があるときは緊急事態と考えられます。頻脈で血圧が低下し、蒼白となって苦悶しているときには、腹部大動脈瘤や卵管妊娠の破裂による出血性ショックを念頭に置きます。血圧が低下し高熱がある場合は、細菌性ショックを考えます。どちらの場合も細胞外液型の輸液を早急に始め、診断と治療を並行して行わなければなりません。

2)開腹歴のない痩身の高齢女性が腸閉塞を起こしているときは、大腿ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアの嵌頓を疑います。前者は鼠径部の診察を行っても見落とすことがあり、後者は診察では診断が困難であり、いずれもCTが有用です。

3)動脈硬化や心房細動があり、痛みが非常に強い割に腹膜刺激症状がなく、その他の身体所見も軽微なときは、腸間膜動脈の閉塞による腸管の虚血を疑い、早急に造影CTや治療も兼ねた血管造影検査を計画する必要があります。

5.必要な二次検査は何か?

1)動脈血のガス分析は、ショック・汎腹膜炎・膵炎・腸管虚血・敗血症などの重篤な状態では必須です。

2)超音波検査は、胆道疾患・虫垂炎・卵巣疾患・尿路結石などが疑われる場合には積極的に行います。また、腸管の拡張や蠕動の有無と腹水の評価もでき、技量が高ければ腹腔内の遊離ガスも検出できます。簡便性と低侵襲性を考えると、優れた検査技師がいる場合はスクリーニングとして行ってよいでしょう。基本的な操作は初期研修医レベルで身につけることは可能ですが、習熟するには経験を要します。

3)CT検査は、レントゲン室への移動や一定時間の隔離を伴うので、バイタルサインが安定していることが原則です。膿瘍や血腫・実質臓器・血管系の評価に威力を発揮し、腹腔内遊離ガスの検出には最も鋭敏な検査です。また、腸管の拡張や捻転、重積の有無だけでなく、部位診断も可能なことがあります。さらに、虫垂炎の診断では、右側結腸憩室炎との鑑別を含め最も信頼性の高い検査とされています。腹腔内の遊離ガスの検出を除くと、単純CTで得られる情報は少なく、造影剤を使用するのが原則で、腎機能低下や造影剤アレルギーの有無を確認しておきます。CTスキャンは、機種による画像の差もありますが、最大の問題は、読影医の技量に大きく左右されることです。

4)このほか、消化管の内視鏡検査や造影検査もありますが、前者は消化管出血がある場合、後者は通過障害が疑われる場合に考慮します。血管造影は、血管の閉塞が疑われるときに行われることがあります。

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