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こんな検査異常を見つけたら〜考える臨床検査〜

AST、ALTが高い!(後編)

2014/05/15
小柴賢洋(兵庫医科大学臨床検査医学)

 ※この記事は「臨床研修プラクティス」(文光堂)2009年3月号の特集を転載したものです。

症例をみてみましょう

 前編を念頭に置いて症例をみてみましょう。簡単な病歴とデータを記載してありますので、どんな病態なのか考えてみてください。

症例1
 47歳、女性。健診でAST142、ALT113、γ-GTP184を指摘され受診。最近、全身の痒みを自覚していた。

症例2
 59歳、男性。B型肝炎ウイルスキャリアと言われたことがあるも放置していた。
最近、全身倦怠感を自覚し、健診でAST50、ALT23、γ-GTP44、総ビリルビン1.3(基準値1.2以下)、血小板8.9万を指摘され受診。

症例3
 40歳、男性。過去の健診でも以下のように異常を指摘されていた。
今まで気にはなっていたが多忙のため放置していた。しかし、今年40歳(癌年齢)になったこともあり、今回受診した。タバコは吸わず、アルコールも機会飲酒程度である。

  • 2005年10月:AST26、ALT46、γ-GTP52
  • 2006年10月:AST30、ALT62、γ-GTP48
  • 2007年10月:AST27、ALT58、γ-GTP50

症例4
 20歳、女性。AST150、ALT30、ALP242(100~340)、LAP154(120~240)、CK30(10~90)、T-Bil4.2、D-Bil1.2、LDH3,000

アドバイス
・ 一般に基準値は健常者あるいは当該疾患のない者を多数集め、その95%が含まれる値と規定されている。すなわち、5%は基準値外となるため、基準値からはずれたデータがあるから異常とは言えないし、基準値内であっても正常とは限らない。

・ 人間ドックなど検診で軽度のAST、ALTの上昇が認められた場合、後日再検査すると多くの例で基準値内の値となる(LazoM,SelvinE,ClarkJM:AnnIntern Med 148(5):348-352、2008)

・ 検査値(絶対的な数値)を頭から信じて一喜一憂してはならない。一般に、CVの2倍までの変動は誤差範囲である。例えば、仮にASTのCVが5%の検査室で測定した結果が100であった場合、100×5(%)×2=10なので真の値は90~110(100±10)の間にあると考えられる。従って、次回検査値が92に低下していても誤差範囲の変動であり、真の低下とは言い難い。

●症例1(解説)
 中年女性、無痛性で痒みと肝胆道系酵素異常があることから、慢性ウイルス性肝炎、膠原病類縁疾患、薬剤性障害、また胆管癌などの悪性腫瘍も念頭において検索する。

 本例はHBs抗原(-)、HCV抗体(-)、LDH299(基準値119~229IU/L)、ALP1,023、抗核抗体1,280倍、抗ミトコンドリア抗体(+)で原発性胆汁性肝硬変と診断された。

●症例2(解説)
 B型肝炎ウイルスキャリアで血小板数の低下があり、軽度の肝機能障害をみることから、肝硬変による脾機能亢進状態(hypersplenism)を考慮する。

 本症例はタンパク分画でβ-γブリッジを認めるなどし、精査の結果、予想どおり肝硬変と診断された。

●症例3(解説)
 ALTが軽度ながら持続的に高値であり、慢性ウイルス性肝炎の可能性が考えられる。脂肪肝なども考慮しながら精査を進める。

●症例4(解説)
 LDH/AST=40より血液疾患由来が示唆される。LDHアイソザイムではLDH1、LDH2主体の増加(LDH1≦LDH2)であり、赤血球、心筋(心筋梗塞:発作後24~72時間)などの鑑別が必要となるが、CKが基準値内より赤血球由来の可能性が高い。間接Bil優位のBil増加は溶血・無効造血に一致する所見である。本症例は基礎疾患であるSLEに伴う溶血性貧血であった。

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