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こんな検査異常を見つけたら〜考える臨床検査〜

PT、APTTが長い!(前編)

2014/04/10
米川修(聖隷浜松病院臨床検査科)

 ※この記事は「臨床研修プラクティス」(文光堂)2009年3月号の特集を転載したものです。

検体処理の不備、肝臓の蛋白合成障害、栄養不良・吸収障害等によるビタミンKの欠乏、DICなどの消費亢進、潜在する抗燐脂質抗体症候群(特にAPTT延長)と、稀ではあるが先天性凝固異常の有無などに注意を払う。

PT、APTTの延長の原因および病態をどのように診断するか

1.PT、APTTって?
 PT(prothrombin time)は、被検血漿にカルシウムイオンと組織トロンボプラスチン(組織因子)を添加しフィブリン析出までの時間を測定する、外因系(F.VII)ならびに共通系凝固因子活性(F.X、F.V、F.II、フィブリノゲン)のスクリーニング検査である。

 APTT(activated partial thromboplastin time)は、被検血漿にカルシウムイオンと燐脂質、さらに接触因子活性化剤(カオリンなど)を添加しフィブリン析出までの時間を測定する、内因系(prekallikrein:PKK、high molecularweight kininogen:HMW-K、F.XII、F.XI、F.IX、F.VIII)ならびに共通系凝固因子活性のスクリーニング検査である。

 因子活性低下だけでなく凝固因子、測定系のインヒビター存在でも延長をきたす。特に、APTT延長における燐脂質に対する自己抗体に注意が必要。

2.測定の目的は?
 凝固系の異常の検出、治療の指標(PTによるクマリン療法、APTTによるヘパリン療法)や肝臓の蛋白合成能評価に利用される。抗燐脂質抗体症候群(antiphospholipid antibodysyndrome:APS)発見の指標として意義が大きい。

3.PT、APTTの延長の判断は?
 PTの場合は、施設にもよるが(当施設では)活性で80%以下、INRで1.1以上を延長と判断している。

 APTTは、正常対照に対し5秒以内を正常、10秒以上を延長とする文献が多いが、筆者は70~80%以下を異常と見なし対応している。

4.データ自体が信頼できるか?~検体の精度保証の確認を!
 凝固検査に限らず、検査データの評価に際し、適正条件下での適正検体採取と測定がなされているかの確認を行う。

1)適正な採血を行うために
 採血は、19~21Gの注射針を用い、1分以上の駆血帯の使用は原則的に避けること。真空採血管の場合は、長時間の駆血の影響を受けやすいので2番目に採血する。複数の採血管がある場合は、死腔による容量の低下と組織トロンボプラスチンの混入を避けるため、2番目以降とするのがよい。

 やむを得ず凝固検査以外用を含めた注射筒での採血では、注射筒内での凝固の活性化を最小限とし、最初に専用の採血管(黒キャップ)に分注する。3.2%のクエン酸ナトリウム1容に血液9容を混合し、緩やかに数回転倒・混和した検体を検査室へ供出する。採血後の検体は、速やかに検査室に輸送する。特に未分画ヘパリン療法のモニタリングに使用する検体は、血小板第4因子(PF4)によりヘパリンが中和される可能性があるため、採血後1時間以内に遠心分離されなければならない。

 検査室では、4℃、3,000rpm、15~20分間遠心し、上清の血漿を検体とする。測定までは冷却保存するが、当日測定できない場合は-80℃に凍結保存し検査に供する。

 検査室では、1,500gで15分間以上遠心分離(18~25℃)することが米国のCLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)では推奨されている。溶血検体では、赤血球膜の溶解により凝固因子が活性化され、凝固系が活性化する可能性があるため、明らかに溶血を認める検体は検査に適さないので、可能であれば、再採血をして検査をすることを推奨する。

 CLSIのガイドラインでは、PT用の検体は、全血でも血漿でも室温で24時間安定とされるが、採血後、可及的早期に検査をすることが原則である。冷蔵保存は第VII因子のcold activationを引き起こす可能性があるので推奨されない。APTTは、全血、血漿共に4時間以内に測定しなければならない。直ぐに検査出来ない検体は、検体を分注し、短期保存(最大2週間以内)の場合は-20℃以下、長期保存の場合は、-70℃以下で凍結保存する。

2)適量の採血を行うために
 適量を採血しないと抗凝固剤との比が1:9とはならず、血液量に比し抗凝固剤が過量となり見かけ上の延長を招く。検体提出に際しては、必ず適量かどうかを確認する。病棟によっては、採血管の保管期間が長くなり真空度が弱まり、必要量が取れない事態も生じうる。

 稀に、多血症の患者(Ht>55%)では、相対的に血漿量が低下し延長した結果が出る。Htが55%を超える場合は、下記の式を用いてクエン酸ナトリウムの量を補正する。

C=(1.85x10-3)x(100-Ht)x(VBlood)
Cは採血管内に残すべきクエン酸ナトリウム液量
Vbloodは血液添加量(採血管の容量が5.0mlであれば4.5ml)
Cは定数になる。
1.85x10-3は定数となる。

 中心静脈カテーテル中の患者では、ヘパリン生食でフラッシング後の採血の場合、残余のヘパリンの影響で見かけ上の延長をきたすことがある。一定量の脱血後の採血が必要となる。

アドバイス
データに疑問が生じた場合は、躊躇せず再検をする。再検が患者に負担になると判断し、誤ったデータを基に過剰の医療行為をすることは避ける。

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