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デバイダーは埋没したP波を探すのに必須の道具
今一度の改訂を願う「不整脈のバイブル」

2021/04/14
田中 和豊

 番外編も含めると、前回までに心電図の教科書を、実に14回も連載してしまった。全部読んでいただいた読者の方には、大いに感謝したい。今回からは「胸部X線写真」の教科書を紹介するつもりだったが、別の分野の医学書に取り組む前に、どうしてももう一言述べておきたい項目がある。それが「不整脈」である。

 筆者には心電図の教科書で1つだけ不満な点がある。それは、1冊の心電図の本の中で、心電図の判読方法と不整脈についての説明を両方とも記載してあることだ。筆者は個人的に、心電図の判読方法と不整脈の判読方法は、独立して別々の書籍で読む方が合理的だと考えている。12誘導心電図の判読方法は、医師が疾患を診断する際に必要とする技能だ。これに対して、不整脈の判読、特にモニター心電図からの不整脈の認識は、主にベッドサイドで患者の変化に気付くために看護師が必要とする技能だ。さらに不整脈の詳細な診断については、主に循環器内科専門医だけが必要とする技能である。このように異なる場面で役に立ち、対象読者も異なる内容を、1冊の心電図の書籍にまとめてしまうよりは、それぞれの読者に向けて、別の書籍として執筆してほしいと感じている。

 筆者が12誘導心電図の系統的判読方法を教える際にも、あえて「不整脈」の診断は避けて「脈拍 不整」とだけ読んで他の項目を読み進めるように伝えている。もちろん1拍の心電図の中の房室ブロックや完全左脚ブロックなどは読むようにしているが、脈拍の不整は単に不整とだけ読んで、それ以上の判読はその時点ではしないようにしている。なぜならば、不整脈の判読は非常に難解だからである。不整脈の中には、専門医でも解釈が難しい場合がある。そんな難しい領域に素人は足を突っ込まない方が無難なのである。

 しかし、そんな筆者にも不整脈について否応なしに深く勉強しなければならない機会があった。それは卒後1年目に横須賀米海軍病院でACLS(advanced cardiovascular life support)のコースを受講した時のことだ。このACLSのコースでは、約1カ月前にテキスト1冊が手渡されて、コース当日までに読み込んでくることになっていた。そのため約1カ月間、ACLSテキストに記載されている心肺蘇生時の不整脈とその対処方法とともに、脈拍がある場合の不整脈の判読方法とその治療法を集中的に勉強したのであった。

 不整脈の勉強については、このACLSのテキストと実習だけで十分かというと決してそんなことはなかった。ACLSテキストはあくまで救急蘇生法という応急処置にすぎず、不整脈を体系的に講義するものではなかった。それでは、不整脈を系統的に学ぶためにはどのようにすればよかったのであろうか?

 不整脈を系統的に学ぶ絶好の名著が、実は筆者の研修医時代に既にあったにもかかわらず、まだ読んでいない書籍なのであった。その不整脈の名著とは、五十嵐正男、山科章 著:『不整脈の診かたと治療 第5版』、医学書院、1997年(分類:教科書、推奨度評価:★★★、推奨時期:後期専攻医~)である。

五十嵐正男、山科章 著:『不整脈の診かたと治療 第5版』、医学書院、1997年(分類:教科書、推奨度評価:★★★、推奨時期:後期専攻医~)

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

医学書ソムリエ
良い医学書は良い海図のように、臨床の大海原の航海を確実に楽にしてくれるもの。しかし、数多く出版される医学書のどれを読んだらよいのでしょうか。本連載では、筆者の田中和豊氏が、忙しいあなたの代わりに様々な医学書に目を通し、「これは良い」と思ったものだけを紹介します。

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