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心電図 最後の1冊
20冊の書籍を読み通して改めて気づいた自分の先入観

2020/10/15
田中 和豊

 この連載の第42回から始まって、途中の番外編も含めると今回の第53回まで2年間かけて心電図の書籍を紹介してきた。実は筆者の個人的な興味からすると、まだまだ読んでみたい心電図の書籍が存在する。

 洋書で言うと、Marriot やGoldbergerの心電図の書籍である。Marriotの書籍は、筆者がアメリカで臨床研修をしていた時代に、第43回で紹介したDubinの『図解心電図テキスト』の次に読めと言われていたが、いまだに読破していないからだ。この原稿執筆中に読もうと考えていたが、現在改訂作業中のようで手に入らなかった。Goldbergerの書籍を読みたい理由は、第47回で紹介した『図解心電図学』の著者であるGoldmanと名前が似ているので、単純に比べてみよう思った次第である。和書で言うと、最近では若い先生方による新しい心電図の書籍が何冊も発刊されている。また、日本不整脈心電学会からは心電図検定の書籍まで出版されている。

 筆者がこの連載で多くの心電図の書籍を紹介した目的は、第43回で述べたように筆者が心電図を教わった故・和田敬先生から「将来循環器内科に進みたいのであれば、学生時代に心電図関連の書籍を10冊は読破しろ!」と言われたことを思い出し、遅ればせながらこの目標を達成しようと試みたからである。前回までに精読と通読を含めて19冊に目を通したので、この辺で良かろうと考えている。従って、心電図の書籍を紹介するのは今回で最後にしようと思う。

 さて、本題に入る前に興味深い日経メディカルの下記の記事を紹介したい。
医師4358人に聞いた「どの検査法、診察法をスキルアップしたい?」

 この記事によると、医師4358人に「自身の診断力向上のために、さらにスキルアップしたいと思う検査や診察方法」を聞いたところ、「心電図」と答えた人が1727人でトップになったそうだ。1位の「心電図」に続いて、2位「胸部X線写真」1482人、3位「頭部CT/MRI」1379人となっていた。自由意見欄には、「きちんと学べていないと実感することがあるため」「自動解析を超えたい」「心電図と胸部X線は、いくら勉強してもし過ぎということはありません。多分一生勉強が続くでしょう」などというコメントが寄せられていた。

 このアンケートに示されているように、実際に心電図判読に関して自信がない現役医師は多数に上ると推測される。その証拠に「心電図」と名の付く書籍は売れ行きがいいらしい。心電図に対する不安感を払拭するためには、筆者は個人的には医学部教育で学生が臨床実習に入る前に集中的に心電図を教育するプログラムが有効だと考えている。それは社会人になってから英会話の重要性に気づいて、習得しようと努力を始めても、学生のうちから英会話の訓練をしていた人に、なかなか追いつけないのに似ている。

 以前、ある循環器内科の先生に、医学部教育における心電図教育プログラムのようなものを創る必要があるのではないかと提言したことがあったが、「そんなもの自分で勉強すればいい」と瞬時に却下されたことがあった。確かに循環器内科志望の学生は黙っていても心電図を勉強するであろう。しかし、それ以外の分野を志望する多くの学生が、将来他の診療科目の医師となって心電図に接するのである。そして重要なのは、専門医以外の医師が心電図判読に自信を持てないでいるらしいことだ。

 そう考えていた筆者にうって付けの心電図の書籍を発見した。それが、香坂 俊 著:『もしも心電図が小学校の必修科目だったら』、医学書院、2013年(分類:通読書、推奨度評価:★、推奨時期:後期専攻医~)である。本書籍はそのタイトルから分かるように、心電図が医学部の必修科目どころか、小学校の必修科目だったらというのである。

香坂 俊 著:『もしも心電図が小学校の必修科目だったら』、医学書院、2013年(分類:通読書、推奨度評価:★、推奨時期:後期専攻医~)

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

医学書ソムリエ
良い医学書は良い海図のように、臨床の大海原の航海を確実に楽にしてくれるもの。しかし、数多く出版される医学書のどれを読んだらよいのでしょうか。本連載では、筆者の田中和豊氏が、忙しいあなたの代わりに様々な医学書に目を通し、「これは良い」と思ったものだけを紹介します。

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