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実力を磨く心電図集中トレーニングの良書
心電図400本ノックを試してみた!

2019/08/06
田中 和豊

 前回は心電図を1枚の画像として認識する瞬間的心電図判読方法の良書を紹介した。これで、見落としがないように順序立てて丁寧に読んでいく古典的判読法と、典型的な波形を瞬間的に見つける心電図判読法の両方を学ぶ機会を得たことになる。今回は、両者をうまく使い分けて日常診療に活かすことができるかどうか、心電図の実例を数多く収録した書籍で、実力を試してみることにしよう。

 前回の連載では、筆者が初期研修医の頃、病院で記録した心電図がすべて検査室に集められ、その大量の心電図を正常な心電図とそうでない心電図に振り分けるのが初期研修医の仕事だったことを紹介した。この振り分け作業以外にも、初期研修医はCCUをローテーションするときに、循環器内科の先生と1対1で心電図を判読することが義務付けられていた。初期研修医に心電図が与えられて、読み取れる所見を述べさせられる。その後で、心電図所見から考えられる鑑別診断などが問われるというものだった。しかも、判読する心電図は1枚ではなく、一定の時間に読めるだけ何枚も読むのである。

 この1対1の判読は、将来循環器内科を志す初期研修医だけでなく、外科系志望者も含むすべての初期研修医に対して行われていた。グループではないので逃げようがなく、自分の実力が露呈されてしまう。しかも担当する循環器内科の先生は、その病院では神様のような存在で、心電図判読には非常に厳しいことで有名であった。そのため、心電図が苦手な初期研修医にとっては、まるで「拷問」のような時間に感じられたものである。

 筆者は学生時代に和田敬先生の薫陶を受けていたおかげで、何とかこの「拷問」の時間をくぐり抜けることができた。後からある先輩から聞いた話だが、心電図が提示されてから約30秒間何も言えない研修医がいると、「帰れ!」とおっしゃって、その初期研修医を出身大学に帰らせたという逸話があったそうだ。医師たるもの循環器内科が専門でなくても、心電図を読めなければならないという信念をお持ちだったのだろう。

 この循環器内科の先生は、恐らく心電図の判読を間違えると患者の生死に直結する可能性があることを考えて、初期研修医に対しても厳しく指導されたのだろうと思う。しかし、現在の心電計には心電図の自動解析装置が内蔵されていて、波形記録とほとんど同時に、解析結果や疑い病名が表示される時代となった。今でも当時ほど厳しい指導が必要かと言われると、やや疑問である。

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

医学書ソムリエ
良い医学書は良い海図のように、臨床の大海原の航海を確実に楽にしてくれるもの。しかし、数多く出版される医学書のどれを読んだらよいのでしょうか。本連載では、筆者の田中和豊氏が、忙しいあなたの代わりに様々な医学書に目を通し、「これは良い」と思ったものだけを紹介します。

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