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非腎臓内科医が酸塩基平衡を解説、若手にお勧めの入門書
血液ガスの良書

2018/01/17
田中和豊

 前回は電解質の良書を紹介した。今回は酸塩基平衡の良書を紹介するつもりであったが、酸塩基平衡に関連する書籍は前回までに輸液や電解質に関連して何冊か紹介している。従って、今回は酸塩基平衡も含めた血液ガス一般についての良書を3冊紹介することにする。

 書籍の前にまず、血液ガスの評価方法に関して、拙著『問題解決型救急初期検査』でも取り上げた非常に古いが興味深い論文を紹介する。
Hingston DM, Irwin RS, Pratter MP, Dalen JE: A Computerized Interpretation of Arterial pH and Blood Gas Data: Do Physicians Need It? Respiratory Care 1982;27(7): 809-815.

 この論文はコンピュータによる血液ガスデータ解析が必要か否かを判断するために、University of Massachusetts Medical Schoolの内科グランドカンファレンスで、出席者にアンケートと血液ガスデータ分析の評価についてのクイズを行ったものである。出席者は、3年目医学生2名、4年目医学生9名、呼吸療法士6名、内科レジデント22名(卒後3年目まで)、内科後期研修医4名(卒後4、5年目)、開業医1名、常勤医師20名の呼吸器内科と腎臓内科を専門としない64人であった。その結果、61%は血液ガスデータ分析の基礎知識はあると答え、71%はコンピュータによる血液ガスデータ分析は不要であると返答した。しかし、彼らの血液ガスデータ分析クイズの正答率はわずか39%に過ぎなかったそうだ。この調査結果から著者らは、呼吸器内科医そして腎臓内科医以外の非専門医には血液ガスのコンピュータ解析が必要だと結論している。

 このアンケートとクイズは、論文の著者の1人である呼吸器内科医が血液ガス解釈についての通年の講義を行った後に施行されたもので、クイズは血液ガス解釈でも呼吸評価に偏るいささかマニアックな問題であることは否めない。しかし、この論文は医師の血液ガス解釈についての実態を見事に指摘したものだと私は見ている。この論文以降、医師の血液ガス解釈の実態についての調査は行われていないと思うが、現在でも血液ガス解釈ができる医師は、研修医だけでなく指導医も含めて、非常に少ないと私は感じている。血液ガスの解釈は分かっているようで分からない。そんな状況をどうしようもなく、日常診療でなんとなく解釈している……。これがほとんどの医師の現状ではないか。

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

医学書ソムリエ
良い医学書は良い海図のように、臨床の大海原の航海を確実に楽にしてくれるもの。しかし、数多く出版される医学書のどれを読んだらよいのでしょうか。本連載では、筆者の田中和豊氏が、忙しいあなたの代わりに様々な医学書に目を通し、「これは良い」と思ったものだけを紹介します。

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