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日本語から翻訳しない会話術
英語で診療するための良書

2014/12/16
田中和豊

 前回は「症例プレゼンテーション」についての良書を紹介した。実際の患者診療で、問診から始まって身体診察をしてその後の症例プレゼンテーションをするという一連の診療の流れについて、これで良書を一通り紹介し終えたことになる。我々は通常日本人患者に対して日本語で診療を行っているが、いつもと違って外国人を診療する場合にはこの流れを英語で行わなければならないときがある。

 筆者はアメリカでレジデント教育を受けた。このことを研修医に話すとこう聞かれることがある。「先生はアメリカで英語で診察してたんですか?」と。アメリカの病院でアメリカ人の患者を相手にしていたのだから、通常は英語で診療するに決まっている。研修医には「当たり前だろ」と答えはするが、最初から当たり前のように英語で診療できていたかというと、そんなに簡単ではなかった。

 筆者は、日本で生まれて日本で育った日本人である。幼少時に海外文化や外国語に触れた帰国子女ではない。英語も義務教育の中学1年生で初めて勉強して、それ以前にはアルファベットさえよく知らなかった。大学生になるまで外国に行ったこともなかった。そんな生粋の日本人が、日本の学校教育の英語の授業を受けただけで自然に英語が話せるわけはない。

 だからよくこんなことを聞かれる。「英語をどうやって勉強したのですか?」、「英語を教えてください」、「アメリカで英語苦労しなかったんですか?」、「外国人を診療するときに英語でどう言ったらいいのですか?」などなど。実際に書店に行くと英会話の本がいかに多く出版されているのかに驚かされる。観光旅行者向けの入門書から、一般の日常英会話、それぞれの専門分野別の英会話など、探せばきりがない。医学英語に限ってもこんなに需要があるのかと思えてしまうほど多くの本がある。言い換えるとそれだけ医療現場で英会話に困っている日本人が多いということであろう。

 どのようにしたら日本人が英語をうまく身に着けられるかという根本的な問題をここで取り扱うと、本連載の趣旨から大きく逸脱してしまう。この問題については以前に他で考察したのでこのことについて知りたい方は文末の参考文献を参照してほしい。ここでは実際の医療現場で要求される英語を「話す」「書く」などの能力に限定して考えたい。特に今回は、外国人が診察に来ていやがおうでも英語を話さなければならない状況を考えることにする。そんなときに役立つ良書を紹介したい。

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

医学書ソムリエ
良い医学書は良い海図のように、臨床の大海原の航海を確実に楽にしてくれるもの。しかし、数多く出版される医学書のどれを読んだらよいのでしょうか。本連載では、筆者の田中和豊氏が、忙しいあなたの代わりに様々な医学書に目を通し、「これは良い」と思ったものだけを紹介します。

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